宣教師ザビエルについて
2015年 6月 5日 金曜日
中学校の歴史の教科書に登場するフランシスコ・ザビエルは、一度は図版で容貌を見たことがある日本では有名な宣教師の一人です。初めて渡来した九州や伝導をした山口県には所縁のものが残されています。自分がザビエルに関する文庫本を手に取ったのは、随分前に行った長崎県の日本26聖人記念館でのことでした。彫刻の師匠である池田宗弘先生がキリスト教彫刻を作っていることがあって、自分の興味関心も遠い欧州から遙々やってきた宣教師に向けられていました。日本でキリスト教を根付かせるために、どんな困難な道のりがあったのか、当時の日本人の宗教観はどんなものだったのか、キリスト教伝来の史実を知りたくて「ザビエル」(結城了悟著 聖母の騎士社)を読みました。現在読んでいるドイツロマン派に関する書籍は重いので、時として軽量な文庫本を携えることがあります。「ザビエル」はそんな一冊でした。著者の結城氏はスペイン人で日本に帰化した司祭だったようです。本書にはザビエルがスペインのハビエル城で生を受け、パリ大学で学び、やがて信仰生活に入り、イエズス会の創立に尽力し、東洋各地へ布教を行い、日本を経て中国に至るところで絶命する、言わばキリストに捧げた真摯な人生が描かれています。ザビエルが清貧で人徳のあった人物であったことは疑う余地もなく、彼をここまで崇高にした宗教とは何かを考えさせる一冊になっていると思いました。文中で自分が興味をもった一節があります。日本人の謙虚で生真面目な姿勢が読み取れる箇所です。「すぐに信者にならないで、まず第一に教えを聞き、正しいと思うと説教者の私生活を見る。教えと生活が一致するなら、そのとき教えを受けるであろう。」と書かれた日本人の総体的な特徴は、現在忘れられつつある日本人の特性をもう一度考え直す契機になるのではないかと思うのです。