ホドラーにおける「オイリュトミー」
2014年 12月 22日 月曜日
スイスの象徴主義を代表する画家フェルディナンド・ホドラー。現在国立西洋美術館で展覧会が開催されています。自分はホドラーのまとまった作品を見るのは初めてでした。ホドラーはスイス本国では高い評価を受けている芸術家で、公共的な壁画も残してします。ホドラーの人物画や風景画には彫塑的な捉えがあって、自分の好みに合います。そういう意味でも自分はもっと前からホドラーを知っているべきだったと思っています。ホドラーの代表作の中で自分は「オイリュトミー」という作品に注目しました。宗教的な主題と関係がありそうと思っていた自分は、解説を読んで実はキリスト教的図像との関係を避けていた作品であることを知りました。「白い布をまとった5人の老人の側面観の姿。彼らは落葉と小石に覆われた霧がかった道を歩んでいる。それは誰にも共通する終着地へと向かう不可避の道行き、つまり、死への道である。」とホドラー本人が語っている「オイリュトミー」は、ギリシャ語で調和のあるリズムという意味だそうです。会場には「オイリュトミー」の女性版と思われる「感情」と題された作品が並べられていました。死へと向かう路傍で、人は振り返ることもなく前を向いて歩いています。軍隊の行進ではありません。各人の思索を彫り込んだ深い皺が描かれています。ゆっくりと一歩ずつ進む行程に、模索か悟りかの境地を感じるのは私だけでしょうか。その他公共の壁画に見られる人物群像にも死へ向かう道が隠されているようにも思えてきます。全体的にはがっしりした構成に象徴的な人物像、スケールのある世界観を持ち、内面的にも深遠な表現に到達していて、今展はホドラーの作品を網羅した充実した展示内容になっていると思いました。