「悲劇の誕生」読後感

「悲劇の誕生」(ニーチェ著 秋山英夫訳 岩波書店)を全て読んだところで、ニーチェとはどんな人物だったのか、ニーチェにとって哲学とは何だったのかと知りたいと思うようになりました。「悲劇の誕生」は体系的な学問と言うより、むしろ散文を読んでいるような感覚を持つのは私だけでしょうか。自由記述的で魅力的な言い回しは、天性なのか、敢えて豊富な知識の中から掻い摘んで個性的な表現をしているのか定かでないところが散見されます。面白さで言ったらこれほど面白い哲学的読み物はないと思います。これが学問としての文献学的体裁を作っているものではないと、他書からの情報にありましたが、自分も同じ感想を持ちました。ただ、全てがニーチェ流解釈で進んでいく本書は比類ないものであることは疑う余地はありません。本書が出版された当時、学者達からは黙殺され、また相当な批判を浴びたことは自分も頷けるようになりました。ただ、ニーチェの問題提起力は物凄いパワーがあって自分も惹きこまれてしまいました。今流行りの暴露本のようにも思えてきます。これが24歳の処女作であれば、晩年の「ツラトゥストラはかく語りき」はどんな内容なのか、これもいずれ読んでみたいと思っています。ニーチェは継続して読むことは避けようと思います。放射するパワーを自分の中で一旦保留して仕切り直しをしたいと思います。

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