「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」読後感

「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」(水戸芸術館現代美術センター編 フィルムアート社)を読み終えました。ヨーゼフ・ボイス関連の3冊の書籍を読んで、自分も一応ボイスの目指していた「社会彫刻」や「拡張された芸術概念」等について知ることが出来ました。社会を芸術によって変革しようとする試みの理想とするところはよくわかります。それはひとり一人の心の問題としている考え方もわかります。でも自分はミヒャエル・エンデとの対談による考え方の相違に注目しました。「ふたりの相違は『芸術』概念にも顕著である。ボイスが『芸術』概念は人間の営み全般に拡張できると語るのに対して、エンデはあくまで特定の形式をもった『芸術』に固執する。~略~エンデの『芸術』概念は、ボイスのそれに比較すれば一見旧弊である。しかし、伝統的な『芸術』概念を一蹴し、誰もが社会形成に向かうべきだとするボイスの主張は、エンデにはおそらく高圧的に聞こえたであろう。エンデは『なんでも共通分母にそろえたがる』『ドイツ的傾向』を批判しつつ、遠まわしにボイスの主張を非難する。あらゆる人を同じ目標に向かわせる権利など、誰にもない。」自分はエンデの主張に同意します。ボイスの功績の大きさを認めつつ、3冊の書籍から浮かび上がるボイスの思想には、前書籍にあったようなヴァーグナーやヒトラーに比較し得るような体質があるように思えます。これをドイツ的と言い切っていいものかどうかわかりませんが、カリスマであったことだけは間違いなさそうです。次なる通勤の友はニーチェにします。

関連する投稿

  • ドイツ表現派に纏わる雑感 現在、通勤中に読んでいる「触れ合う造形」(佃堅輔著 西田書店)と、職場に持ち込んで休憩中に読んでいる「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 […]
  • 三連休③ 美術館巡り&ビール祭り 三連休の最終日になりました。今日は工房へは行かず、家内と東京と横浜の美術館を巡ることにしました。師匠の池田宗弘先生は自由美術協会の会員で、例年この時期に先生から招待状が届きます。そこで今日が自由美術 […]
  • バルラハの思いを辿って… 小塩節著「バルラハ~神と人を求めた芸術家~」(日本キリスト教団出版局)を読んでいると、ドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラハの人間性に関わるところに魅かれて、その人から生まれる造形は然も有なんと感じ […]
  • 「神と人を求めた芸術家」 表題はドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラハのことを取り上げた「バルラハ~神と人を求めた芸術家~」(小塩節著 […]
  • 自分の中のバウハウス 今月4日のブログのタイトルが「自分の中のシュルレアリスム」。今日はバウハウスです。自分はバウハウスに特別な思い入れがあります。ドイツが生んだ画期的な造形教育施設だったバウハウスは、ナチスの弾圧を受け […]

Comments are closed.