バルラハの思いを辿って…

小塩節著「バルラハ~神と人を求めた芸術家~」(日本キリスト教団出版局)を読んでいると、ドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラハの人間性に関わるところに魅かれて、その人から生まれる造形は然も有なんと感じてしまいます。「~略~バルラハという人には、およそ機敏さとか立ちまわりの早さ、峻敏さ、ウィットのはやさなどというものはまるでなく、つまり都会人らしさといったものがまったくなくて、ずんぐりと鈍重な、『六月の曇り空』のようなところと剛直なところがつよく、やはりこの人は北国の人だと思うのである。~略~」そんなバルラハの大地にどっしりと構えた彫刻に、じわりじわりと惹きつけられているのが今の自分です。ひらめきやきらめきを感じさせない代わりに、その重厚な存在感が脳裏に刻まれ、実材を借りて人間の根強さを表現していると思います。きっと日々アトリエで木や土に向かい、コツコツ作り上げていたのだろうことが想像されます。「~略~第二次大戦末期にこのアトリエはソ連軍のガレージとして接収され、数々の作品はガラクタとして庭に捨てられたが、シュルトが奔走して戦後接収を解除してもらい、バルラハ生前と同じ姿に戻り、高齢のシュルト夫妻が大事に管理した。~略~」というバルラハ周辺の事情が、妙に自分の心を捉えます。自分は実際に北独に行ってこの目で見てみたいという欲求を持ち続けています。

関連する投稿

  • 「神と人を求めた芸術家」 表題はドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラハのことを取り上げた「バルラハ~神と人を求めた芸術家~」(小塩節著 […]
  • ドイツ表現派に纏わる雑感 現在、通勤中に読んでいる「触れ合う造形」(佃堅輔著 西田書店)と、職場に持ち込んで休憩中に読んでいる「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 […]
  • 三連休③ 美術館巡り&ビール祭り 三連休の最終日になりました。今日は工房へは行かず、家内と東京と横浜の美術館を巡ることにしました。師匠の池田宗弘先生は自由美術協会の会員で、例年この時期に先生から招待状が届きます。そこで今日が自由美術 […]
  • 「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」読後感 「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」(水戸芸術館現代美術センター編 […]
  • 自分の中のバウハウス 今月4日のブログのタイトルが「自分の中のシュルレアリスム」。今日はバウハウスです。自分はバウハウスに特別な思い入れがあります。ドイツが生んだ画期的な造形教育施設だったバウハウスは、ナチスの弾圧を受け […]

Comments are closed.