ボイスとウォーホル

アンディ・ウォーホルは米国が生んだポップアートのスターで、量産という概念をアートに持ち込んだ芸術家です。「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」(水戸芸術館現代美術センター編 フィルムアート社)を読んでいて、ボイスとウォーホルが比較されている箇所があります。別の筆者によるマルセル・デュシャンとの関係もあって、ボイスの位置づけに興味が湧いてきます。「ネオ・ダダやフルクサスが、『レディメイド』作品などによって既成の芸術概念を解体することに力を入れたマルセル・デュシャンの影響を強く受け、『反芸術』路線に拘る傾向があったのに対し、ボイス自身はしだいにデュシャン的なものから距離を取り、ルドルフ・シュタイナーの人智学や、シラーの美的教育論、ノヴァーリスのロマン主義的・魔術的世界観などの影響を背景に、むしろ、人間の内にある創造性を発展させる芸術の社会的役割を強調し、『芸術』概念を拡張するという考え方を追求するようになった。」(仲正昌樹著)「ボイスとウォーホルは、戦後美術を語る時にしばしば対比的に語られる。アメリカの消費社会の表層をひたすら反復しつづけたウォーホルと、ゲルマン的な神話の起源をどこまでも遡行してみせるボイスの作品は、一見すると対極的に感じられるのも無理はない。~略~なによりも異なるのは、ウォーホルが商業や欲望、消費といった領域を核としながら、人間主体よりも機械に傾倒していたのに対し、ボイスは労働や意志、生産という概念に基礎をおき、マルクスのように歴史の主体としての『プロレタリア』と、自らの『ボヘミアン』としての立場を重ね合わせようとしていた点である。」(毛利嘉孝著)ボイスとウォーホルは面識はあったようですが、生前お互いの関係を作る機会はなく、現代美術界の2大巨匠として君臨しています。

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