「西洋の没落」との出会い

現在読んでいる「西洋の没落」(O.シュペングラー著 村松正俊訳 五月書房)は20歳の頃に購入した書籍です。どこか大きな書店の専門書棚で見つけ、タイトルに刺激されて買ったように記憶しています。当時、自分は難解な書籍ばかり集めていて、本書も読み始めてすぐ挫折してしまい、実家の押入れに仕舞い込むのが習慣になっていました。20歳の若者が親に内緒で持っていた定番なる風俗本と一緒に、第一級の専門書が押入れに入っているのは、今になって思えば何だか愉快です。卑猥な雑誌と本書のような専門書がごちゃまぜになっている空間は、まさに自分そのもので、心と身体のアンバランスが、綺麗事を言えば自分の青春だったわけです。「西洋の没落」はそのタイトルにどんな意味があるのか、真意を紐解いてみたいと思っていました。加えて大学で西洋彫刻を作っていた自分は、いずれ彼の地に行ってみたいと考えていて、没落していく西洋がどんなものか知りたいと思っていたのでした。ところが読み始めたら一筋縄ではいかない論理、圧倒的な語彙の洪水、目で追うだけでは意味が伝わらない展開に辟易して、あっという間に扉を閉じてしまいました。あれから30数年を経て、やっと最後まで辿りつけそうな按配です。まだ読み終えていないくせに感慨一入です。シュペングラー独特の形態比較に慣れてきて、自分が書く文章に影響が出ています。この分厚い書籍にどっぷり浸かっていれば仕方ないかなぁと思いつつ今日も少しずつ読んでいます。

関連する投稿

  • 「絵画、彫刻の自律性の追究」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の第一部「19世紀における『画家=彫刻家』と『芸術家=職人』の登場」の第1章「画家と彫刻家」の「3 […]
  • 非存在という考え方 あまり夢を見ない私が、ある晩に見た夢を覚えていて、夢の中では学生時代に遡って彫刻を学び始めた頃の私になっていました。人体塑造をやっていた私は、どこの部分の粘土を削り取ったらいいのか散々考えていました […]
  • イサム・ノグチの両親について 先日から「石を聴く」(ヘイデン・ヘレーラ著 北代美和子訳 […]
  • コトバと彫刻について 私は彫刻に関わるようになったのは大学の1年生からで、それまで工業デザインを専攻するつもりだった私が、極端な方向転換をして初めて彫刻に出会ったのでした。本格的な立体表現を知らなかった私は結構混乱して、 […]
  • 「日本を語る 多様で一途な国」について 「日本流」(松岡正剛著 筑摩書房)は、読み易いうえに視点がユニークなので、通勤途中やちょっとした休憩時間に、つい頁を捲って読んでしまいます。第一章は「日本を語る […]

Comments are closed.