雛型の展示で思うこと

立体作品の展覧会に行くと、初めは大きな作品に目が奪われますが、じっくり見ていくうちにガラスケースに入った雛型に注目が移ります。雛型にはいろいろな謎が隠されていて、ひとつひとつ想像しながら鑑賞することはこの上ない楽しみなのです。まず雛型は作家の試作品です。試作品から作家が意図したことや迷いも見えてきます。それは作家が垣間見せる内なるコトバであり、完成作品にいたる思考過程を示すものでもあります。作家名は忘れましたが、石膏による雛型数点が展示されていた個展の、その展開力に心が躍らされました。そのうち1点が大きな石彫になって床に置かれていましたが、作家がカタチの取捨選択を行った思考がわかって興味が沸きました。完成された石彫作品だけ見ていたのでは、その裏にある戸惑いや迷いはわからなかったのです。それらを見せない作家もいると思いますが、同じ創作活動をする自分としては、雛型の展示は歓迎いたします。

関連する投稿

  • 制作の小さな分離形 現在制作中の30本の柱が林立して囲むカタチは「構築〜包囲〜」とタイトルをつけることにしました。まだ手をつけていない柱が6本あり、早速彫らなければならず、時間との戦いになりつつあります。そんな忙しい時 […]
  • 7月末に考えたこと 今月の総括として個展の開催がありました。初めて木彫作品をギャラリーせいほうに持って行きました。4回目の個展でしたが、懐かしい方々に来ていただき、またご感想ご批評もいただきました。真摯に受け止めていき […]
  • 「壁」シリーズの雛型 今年7月の個展に出品する「発掘〜赤壁〜」は4連作のうちのひとつです。4連作といっても、「発掘〜赤壁〜」だけが出来ていて、残りの3点はまだカタチにもなっていません。今日はその雛型を作りました。雛型は4 […]
  • 発掘〜遺構〜に寄せるコトバ 7月の銀座の個展に出品する作品で、タタミ六畳の面積を有する「発掘〜遺構〜」に寄せるコトバを思案しています。図録の1ページ目に掲載するコトバです。この作品のイメージを辿り、初めにどんな思いがあったかを […]
  • RECORD12月・1月がアップ 昨年12月と今年初めの1月のRECORDがホームページにアップしました。これで1年目のシーズンはすべてホームページに掲載したことになります。12月と1月は作品が半立体になっているのが特徴です。木材や […]

Comments are closed.