A・カルダーの浮遊空間

自分は陶彫や木彫を表現媒体にして「発掘」や「構築」シリーズを作ってきました。それは床(大地)から立ち上がっていく造形です。作品によっては大地に埋もれた世界をあらわにして表現したものもあります。いわば大地が発想の起点であり、地面を座標にして、それよりプラスマイナスの振幅する幅が作品の大きな位置を担っています。アメリカ人彫刻家アレキサンダー・カルダーのモビルは、そんな地べたに生える自分の作品とはまるで異なる空間意識を持っていて、自分にとって常に新鮮な存在です。カルダーは20世紀を代表する巨匠であり、自分とは比べることも出来ないのは百も承知です。しかしながら空中に浮遊する空間の解釈は、いつも自分を刺激してやみません。千葉県佐倉市にある川村記念美術館には、カルダーの常設作品のための部屋があります。青一色に塗られた壁に原色のモビルが浮遊する空間は、非日常そのもので誘惑的です。そこでは重力が失われたような錯覚に陥ります。フワフワとした単純なカタチが衝撃をもって迎えてくれる場所なのです。

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