生活環境が齎すもの
2010年 2月 9日 火曜日
自分が24歳から29歳までの5年間海外で暮らしていたことを、50代になって忘れているかと思えば、そうではなさそうだと実感する時があります。もちろんブラブラしていた5年間で失ったものもあります。30歳になったばかりで帰国した時に同世代に引け目を感じていたことは確かです。公務員というありふれた職種を選んだのであれば、早くから日本でやっていても良かったし、彫刻家としてデビューしたのも遅かったのです。大学の仲間がいろいろな美術団体に所属して活躍しているのを知って、親元にいて仕事場も無い自分はどうしたらよいのか悩んでいました。でも最近は海外に住んでいたことが自分の感覚に根付いていて、空間の解釈に多大な影響を受けていることを自覚しました。自宅を建てた時の間取りや工房の在り方が、日本で暮らしていた時の自分とは明らかに違うのではないかと思うのです。狭い日本の住宅事情を考えても、今の自分は贅沢な空間を持っています。贅沢と考えるのは、帰国してから時が経っている証拠で、海外ではこのくらいは贅沢でも何でもありません。そうした生活環境が齎す雰囲気が作品に表れるのではないかと思うことがあります。芸術そのものが文化国家には必要不可欠なモノでも、見方を変えれば贅沢なモノです。その作り手としては空間の大小ではなく、作品を思索しやすい環境を持つべきと考えます。
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Tags: 工房, 留学
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