春の宵 いざ工房へ

工房のロフト拡張工事を請け負っている鉄工業者から連絡が入り、夜6時過ぎに天井の寸法を再度測りに来るというので、私は勤務時間終了後に工房に行きました。桜が咲いて春爛漫な季節ですが、夜はまだ冷えるため、今まで夜の工房に行かずにいましたが、いざ工房に行ってみると、思っていたほど寒くはなく、作業がやり易い気温になっていました。業者は30分程度ロフトに上がってメジャーを当てていました。私は彫り込み加飾を始めました。このところ昼間の仕事は残務整理ばかりで、意欲が湧かない時間を過ごしてきましたが、陶土に触れると気持ちが変わりました。身体中に元気が充満してきました。夜の工房での制作は独特な雰囲気があります。業者が帰った後、周囲は暗くなり、陶彫部品が置かれた空間だけ蛍光灯に照らされていて、まるでステージにスポットライトが当たっているような錯覚に陥ります。立体の陰影が昼間の太陽光線とは明らかに違うのです。改めて人工の光も悪くないなぁと思っています。精神的な集中が得られるのは、こうした光が要因なのかもしれません。私は週末の昼間に陶彫制作をやっているので、夜の制作は快適な季節の時にしかやっていません。おまけにウィークディの仕事が苦しい時は、夜の工房に行く意欲が出ません。彫刻は昼間の仕事で、とりわけ野外での制作は夜明けと共に始まり、日没には終了するという習慣が学生時代から身についてしまっているのです。それに比べて絵画やデザインの制作は夜の照明の中でやっている人が多く、昼夜が逆転している画家やデザイナーもいるのではないかと思っています。しかし、彫刻制作も夜の人工的な光の中で集中してやることもいいのではないかと思えることもあります。彫刻家ジャコメッティは夕方から夜更け過ぎまで制作をやっていたようで、制作時間をどの時間帯に設定するのかは人それぞれなのかなぁと考えます。今のような二足の草鞋生活がなくなったら、私はどんな時間帯を選ぶのでしょうか。春の宵もなかなか捨て難い制作時間帯ではあるなぁと思っているところです。

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