映画「さよなら、人類」

昨日の続きのNOTE(ブログ)になりますが、先日観た映画に関する感想を書いてみます。「さよなら、人類」は第71回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した映画で、スウェーデン人の監督による人間の本質を醒めた視点で捉えた摩訶不思議な作品になっていました。CGは使わず、巨大なスタジオにセットを組んで、1カットずつ構図や配置を綿密に計算して作り上げた、大変手の込んだアナログ映画だということが観ていて伝わりました。配色の統一、遠近法、演劇的な空間処理という演出の中で、坦々と語られるのは日常としての死を含めた生活です。人は生きていく上で滑稽な関わりや皮肉な場面や憐憫を生む状況があり、それでも登場人物たちが電話で言う「元気そうで何より」という挨拶が如何にも日常的で楽観的な台詞に聞こえます。映画では面白グッズを売る冴えないセールスマン2人を縦軸にして、欲望の虜になった舞踊教師や傷つきやすい国王等が登場してきますが、その全てに亘って人間の哀愁や苦楽や可笑しさみたいなものが流れていて、シーンの脈絡として繋がっているのはそうした人間の存在そのもののような気がしました。動きや台詞を極端に限定した画像作りを見て、私は荻上直子監督の「かもめ食堂」に代表される一連の作品を思い出しました。「さよなら、人類」ほど多くを語る映画ではありませんが、似た手法に日本人独特な間合いを感じた映画でした。「さよなら、人類」を見て、その脈絡に新しさを感じなかったのは、これが原因だと思っています。映画を見終わった後、微妙な感想を持ったのは、そうした心理描写が日本人には決して不思議なモノではないことがあって、世界で絶賛された描写のユニークさが自分には伝わらなかったと思えてなりません。

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