未完の美しさを思う

石彫や木彫は、まず素材の持つ美しさがあって、その美しさを引き出すために、彫刻家が腕を振るうものだという認識が私にはあります。それは西欧的な彫刻の考え方とは異なるものです。ヨーロッパの街には、いたるところに彫刻があり、それは建物の一部だったり、広場の記念碑だったりします。そうした彫刻は石は何かを表すための素材であり、石そのものの在るがままの姿を表してはいないのです。たとえばヘレニズムの時代から脈々と続く肉体賛歌は、西欧的な彫刻の礎であり、そうした人体彫刻にあっては、未完はこれから完成していくであろう工程を想像させる途中でしかないと思います。前述した私の考え方は、西欧的な考え方と異なり、たとえ未完であっても完成された姿なのです。石そのものでも配置によって完成とすることができるというものです。これは日本庭園にも繋がる空間解釈です。石彫や木彫で何かを表現するのであれば、未完の美しさに完成を見る彫刻でありたいと願っています。

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