映画「風をつかまえた少年」雑感

映画「風をつかまえた少年」を昨日観てきました。本作の舞台になったアフリカのマラウイという国を私は知りませんでした。21世紀になった今日まで開発途上にあったこの国の、映画で描き出されたリアルな状況を知って、唖然としたのは私だけではないでしょう。撮影はマラウイの農村を使ったそうで、乾燥した土壌が強風に舞い上がる場面も、まさにマラウイの気候風土そのもので、洪水と干ばつを繰り返す状況に言葉を失いました。図録にあった国の説明を引用いたします。「マラウイの都市部では電気を使う家庭も多いが、農村部の電化率は現在も4%に留まる。調理には木を伐採して薪を利用するのが一般的で、夜には灯油ランプやろうそくなどを使用することもあるが、基本的には暗くなったら就寝する家庭が多い。乾電池を使用するラジオ以外の家電製品は農村部ではなかなかお目にかかる機会もない。このような食糧・教育・電化事情がある中で、学校を中退せざるを得なかった少年が、風力発電に取り組み、食糧増産を目指すということが、どれだけ切実な課題だったのか、そしてどれだけ画期的なことであったかがお分かりになるかと思う。」(草苅康子著)父親役のベテラン俳優が監督や脚本も手掛け、息子役の主人公は一般公募から選ばれた少年で、その自然な家族の演技に心酔しました。主人公になったウィリアム・カムクワンバ氏の原作が本作の基になっていますが、氏のインタビューで「完成した映画を観てとても感激した。でも心境は複雑で、というのも僕と家族がくぐりぬけなければならなかった辛い体験を再度思い起こすことになったから。」とありました。それだけ映画はリアルな現状を伝えていると私は判断しました。最後に解説を担当している池上彰氏の言語についての一文を引用いたします。「現実のマラウイではチェワ語と英語が、まるでちゃんぽんのように話されています。映画でも、その点は忠実に再現され、登場人物たちは、英語とチェワ語で会話しています。観客にわかるように英語を使っているのではないのです。」現地出身の俳優ならともかく、そうでない人は言語を覚えるのは大変だったろうなぁと思いました。

関連する投稿

  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 映画「JUNK HEAD」雑感 昨晩、久しぶりに横浜の中心街にあるミニシアターに家内と行きました。レイトショーであるにも関わらず、上演された映画の客の入りは上々だったのではないかと思いました。映画「JUNK […]
  • 創作一本になった4月を振り返る 今日は4月の最終日なので、今月の制作を振り返ってみたいと思います。今月の大きな出来事は、長年続いた教職公務員との二足の草鞋生活にピリオドを打って、創作活動一本になったことです。これは自分の生涯の転機 […]
  • 映画「異端の鳥」雑感 先日、川崎駅前にある映画館TOHOシネマズへ「異端の鳥」を観に行ってきました。本作を私は新聞で知りましたが、上映館が少ないため自宅近くの映画館を探して、しかも深夜の時間帯に行ってきたのでした。家内が […]
  • 映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」雑感 昨晩、家内と横浜市都筑区鴨居にある映画館に、今話題となっているアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観てきました。「新世紀エヴァンゲリオン」は20数年前に社会現象となり、私もそのアニメーション […]

Comments are closed.