週末 過密な鑑賞スケジュール
2019年 2月 16日 土曜日
やっと週末を迎えました。年度末が近づきウィークディの仕事が少しずつ多忙になってくると、週末が楽しみでなりません。今月に入って美術展に行っていないので、今日は行きたい展覧会をチェックして、丸一日かけて東京の博物館や美術館を巡って来ました。合計4つの展覧会、しかも内容の濃いものばかりでした。家内は今後の演奏活動に備えて人混みに出ることは避けたいと言っていたので、今日は私一人で出かけて来ました。過密な鑑賞スケジュールでしたが、気分的には充実した一日を過ごしました。ただし、新作の制作工程があるので、大きなタタラを複数枚作るという最低のノルマをこなす必要があり、朝7時に工房に出かけました。東京へ向けて自宅を出たのは朝8時半になりました。東京上野の東京国立博物館に到着したのは開館時間をやや過ぎたところでしたが、既に平成館の外にまで長蛇の列が出来ていました。開催していたのは「顔真卿」展で、私は実のところ書展をまともに見たことがなかったのでした。「祭姪文稿」に話題が集中しているため、ひと目見ようと出かけたのでしたが、並んでいる鑑賞者のほとんどが中国から来た人々で、「祭姪文稿」が中国の書の変遷史の中で重要な位置を占めていることがよく分かりました。これは台北故宮博物院の所蔵品ですが、なかなか見ることが出来ない作品であること、書体が途中乱れている箇所があるのは感情が迸った痕跡であることも理解できました。「祭姪文稿」を見るまでに70分間じっと並んで待っていたのでした。次に向ったのは東京都美術館で開催中の「奇想の系譜展」。これはNOTE(ブログ)に書いた記憶がありますが、美術史家辻惟雄氏が著した書籍に由来するものです。1970年に書かれた書籍が今も読み継がれ、伊藤若冲ブームの火付け役となりました。日本美術の中に埋もれていた斬新な発想による不可思議な世界、これには私も忽ち魅了され、江戸絵画の虜になったのでした。次に向ったのが奇想の画家と同じ系列の河鍋暁斎の展覧会でした。東京六本木のサントリー美術館で開催されていた「河鍋暁斎」展も、魑魅魍魎が繰り出す非日常の世界があって、思わず引き込まれてしまいました。ここまで巡ってきて、日本絵画の表現の濃さに気分的な疲労を覚えてしまいました。私が若い頃好きだった北欧のボッシュやブリューゲル、ウィーンの幻想絵画を彷彿とさせる表現が、自分が生まれた日本にもあって、しかも身近なことで嬉しくもあり、世界に誇れるのではないかと実感しています。最後に現代日本画の展覧会を見ました。今まで見てきた展覧会と対極にあるかのような美しく清涼な画風でしたが、毒気に当てられてしまった自分にはやや物足りなさを感じました。最後に辿り着いたのは東京中目黒にある郷さくら美術館で開催されていた「竹内浩一の世界」展で、作家が会場にいたため、館内は大変な混みようで、多くの鑑賞者が優美で肌理の細かい表現を堪能していました。最後になって品の良いデザートで料理を終えたような気がして、ほっとした今日の鑑賞スケジュールでした。それぞれの展覧会の詳しい感想は後日改めます。