東京両国の「北斎の帰還」展
2016年 12月 7日 水曜日
先日、東京両国にある「すみだ北斎美術館」に行ってきました。目的はTVで放映された「須佐之男命厄神退治之図」の復元された絵をこの眼で見たかったことでしたが、美術館が企画した「北斎の帰還」展にも眼が奪われました。帰還とはどういう意味かと言えば、百年余りも行方不明になっていた幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」が再発見され、海外から日本へ里帰りをしたこと。もうひとつは世界に散逸した北斎の名画の数々が、北斎生誕の地に再び集められ、北斎専門の美術館で展示されたこと、この二つが帰還としての意味を表しているのです。私が印象深かったのは「隅田川両岸景色図巻」で、陰影に西洋画の技法を取り入れていて、錦絵とは違う写実性に富んだ絵画をじっくり味わえたことでした。図録によると「本絵巻は、両国橋から大川橋(現在の吾妻橋)、山谷掘、木母寺辺りまでの隅田川両岸の風景と、新吉原における遊興の様子を描いた639.9㎝に及ぶ北斎の肉筆画に、画中に登場する名所を読み込んだ横幅76.1㎝の江戸後期の戯作者、烏亭焉馬の狂文が付されている。」とありました。さらに「隅田川の水面に橋や船、岸辺の影がうつる様子が丁寧に描き入れられている点などは、西洋画法の研究を重ね、洋風風景版画も多く制作している北斎の研鑽の結果といえよう。」(奥田敦子 著)と内容を表す文章に、北斎の卓抜した画力を知ることができます。実に精緻で雄大な絵巻だろうと自分も溜息が出ました。遊郭に集う人々の様子もよく分かり、風俗を知る上でも最高の資料になると思いました。日本が世界に誇る葛飾北斎。その専門美術館が今まで無かったことが不思議です。北斎をもう一度堪能するなら東京両国の「すみだ北斎美術館」に再び足を運ぼうと思います。
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Tags: 展覧会, 散策, 版画, 画家
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