発見された陶彫・兵馬俑
2015年 11月 26日 木曜日
秦の始皇帝の巨大な陵墓から発見された8000体もの兵馬俑は、全て陶製で出来ています。所謂自分がよく称している陶彫です。兵馬俑の人物が持っていた器具は別の素材が使われていたようで、青銅製だったり木製だったりしています。木製は当然ながら土中で朽ち果ててしまい、現存していないのです。東京上野の国立博物館で開催されている「始皇帝と大兵馬俑展」を見ると、兵馬俑の人物が写実的な等身大であることに驚きを隠せません。制作に関する論考を求めて図録を見ると、こんな文章が掲載されていました。「中国においては、陶器の多くは叩いて成形されたということである。~略~つまり、粘土を木製の板状の工具(叩き板)で叩いて成形する技法である。一般的な方法は、粘土紐を丸く積み上げて円筒形のものを作り、粘土の内側を~略~道具(当て具)で支え、外側から叩き板で叩く。叩くことによって、形を整えつつ、粘土同士をなじませ、継ぎ目を消していく。粘土の中に気泡が取り残されると、焼いたとき空気が膨らんで製品が割れたり、大きくゆがんだりする。~略~(前221年の統一以前)までの陶製水道管や、平瓦や丸瓦を観察すると、叩き板と小型の当て具で成形されたものと考えざるをえない。製作過程で何度か大きさのチェックはあったと思うが、基本的には名人芸で規格品を量産していたのである。~略~あれだけ大量の兵馬俑を作ることができた背景として、始皇帝の即位のはるか昔から、陶製水道管、瓦、磚などの陶製建築資材の大量生産を可能とする組織があったことを、あらためて強調したい。」(谷豊信著)「俑が大型であればあるほど、ひとりが一体ずつ作っていくよりも、各部位の単位で規格を設け、分業体制下で専従して作るほうがはるかに効率よく正確である。兵馬俑の破片資料を観察すると、脚、胴体、腕、頭部などが別作りとなって、それらを合わせて焼成していることがわかる。」(市元塁著)陶彫作品を手がけている自分にとって兵馬俑製作の興味は尽きません。