陶彫への意欲と可能性

先日見に行った東京上野の国立博物館で開催されている「始皇帝と大兵馬俑展」は、自分に多くの刺激を与えてくれました。陶製の兵馬俑は等身大の人物像や騎馬像で、まさに写実そのものでした。自分は一体ずつ惚れ惚れと見とれてしまいました。自分の学生時代はモデルを立たせて人体塑造をやっていました。当時は骨格や量感の理解と表現、どれをとっても納得がいかず、元々立体把握力の乏しい自分には彫刻分野は厳しい世界と言わざるを得ませんでした。池田宗弘先生との出会いがなければ、とっくに彫刻は止めていたかもしれません。とは言っても色彩感覚でも劣っていた自分は、美術そのものを追求するには資質に疑問があるとさえ思っていたのでした。曲がりなりにも彫刻制作を続けてきて良かったと思える瞬間が、兵馬俑を見てやってきました。何しろ陶彫で作られた兵馬俑は、自分が現在制作している作品に技巧的に通じるものがあるのです。兵馬俑は焼き物であるならば、内部は刳り貫いてあるはずで、部分を作って合体して窯入れしていると図録にも記載がありました。割れたり歪んだりする箇所も多いと見取りましたが、やはり優秀な職人が集められていたらしく、細部に至る状態は素晴らしい完成度になっていました。自分の陶彫は写実表現ではありませんが、今回「始皇帝と大兵馬俑展」を見て、陶彫への意欲が湧き上がり、技巧に対する可能性も見えてきました。

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