映画「風をつかまえた少年」雑感
2019年 9月 2日 月曜日
映画「風をつかまえた少年」を昨日観てきました。本作の舞台になったアフリカのマラウイという国を私は知りませんでした。21世紀になった今日まで開発途上にあったこの国の、映画で描き出されたリアルな状況を知って、唖然としたのは私だけではないでしょう。撮影はマラウイの農村を使ったそうで、乾燥した土壌が強風に舞い上がる場面も、まさにマラウイの気候風土そのもので、洪水と干ばつを繰り返す状況に言葉を失いました。図録にあった国の説明を引用いたします。「マラウイの都市部では電気を使う家庭も多いが、農村部の電化率は現在も4%に留まる。調理には木を伐採して薪を利用するのが一般的で、夜には灯油ランプやろうそくなどを使用することもあるが、基本的には暗くなったら就寝する家庭が多い。乾電池を使用するラジオ以外の家電製品は農村部ではなかなかお目にかかる機会もない。このような食糧・教育・電化事情がある中で、学校を中退せざるを得なかった少年が、風力発電に取り組み、食糧増産を目指すということが、どれだけ切実な課題だったのか、そしてどれだけ画期的なことであったかがお分かりになるかと思う。」(草苅康子著)父親役のベテラン俳優が監督や脚本も手掛け、息子役の主人公は一般公募から選ばれた少年で、その自然な家族の演技に心酔しました。主人公になったウィリアム・カムクワンバ氏の原作が本作の基になっていますが、氏のインタビューで「完成した映画を観てとても感激した。でも心境は複雑で、というのも僕と家族がくぐりぬけなければならなかった辛い体験を再度思い起こすことになったから。」とありました。それだけ映画はリアルな現状を伝えていると私は判断しました。最後に解説を担当している池上彰氏の言語についての一文を引用いたします。「現実のマラウイではチェワ語と英語が、まるでちゃんぽんのように話されています。映画でも、その点は忠実に再現され、登場人物たちは、英語とチェワ語で会話しています。観客にわかるように英語を使っているのではないのです。」現地出身の俳優ならともかく、そうでない人は言語を覚えるのは大変だったろうなぁと思いました。