葉山の「若林奮 飛葉と振動」展
2015年 10月 27日 火曜日
私が学校で彫刻を学んでいた頃、彫刻の研究室には池田宗弘先生がいて、共通彫塑の研究室には保田春彦先生や若林奮先生がいました。他にも彫刻界で活躍されていた方がいましたが、4年間自分が師事したのは池田先生で、私淑したのが保田先生と若林先生でした。自分が在学中から今に至るまで、それぞれ先生方の個展には必ずお邪魔して自分なりに作品の解釈を試みてきました。3人の中で一番解釈が難しく、また刺激的だったのが若林先生でした。図録の年表を見ると当時は「振動尺」が登場し「所有・雰囲気・振動」と題された個展が開催されていたようです。あの頃、先生の講義を聞いても何のことやらわからず、彫刻の概念そのものを新たに構築しようとした思索には理解が及びませんでした。でも何か自分には引っかかるものがあって、木材で出来た直方体に鉄や他の物質が加えられた彫刻「振動尺試作」が意味するものを解き明かそうとしていました。ちょうど自分が人体塑造の巧みさを競うのではなく、彫刻そのものに対して自問自答していた頃だったので、習作から表現に向かう扉を開く時期と、「振動尺」の提示が相まっていたのではないかと述懐しています。空間に置かれたモノは常に振動し、時間とともに変容していく、それら全てを彫刻表現として捉える若林ワールドに、漸く自分の理解が追いついたところで、先生が亡くなられ、残された作品を再解釈していくことになり、先生の作品が見られる機会は自分にとって大切な再会の時と思っています。先日出かけた神奈川県立近代美術館葉山での「若林奮 飛葉と振動」展を見て、改めて気づくことはいっぱいありました。また稿を改めて若林ワールドを検証します。