大地を造形する「丘陵」

なだらかな丘が幾重にも重なる広大な風景。日本では潤んだ緑色の雑木による風景が一般的ですが、自分が滞欧中に旅した地中海沿岸は砂丘や土漠による乾燥地帯がありました。そこに点在する村落や遺跡の数々。自分の創作へ向かう原点がそこにあります。あれから30数年も経っているのに、自分はその時の雑多な印象を結晶化させ、自分なりの心象風景を創り上げてきました。現在制作中の「発掘~群塔~」は大地に霞む塔の数々を造形していますが、これから作る「発掘~丘陵~」は同じイメージによるもうひとつの展開です。丘陵は人工的に作られたものという想定で、そこに点在する円柱のような遺跡がテーマです。円柱40個は同一の大きさにして陶彫で表現します。赤錆で化粧を施す陶彫は黒褐色になり、恰も出土品のような雰囲気が漂います。陶彫は窯の中で炎神によって鍛え込まれ、鎧を纏った勇者のようにも思えます。丘陵の部分は木材による積層を砂で覆います。砂に油絵の具を染み込ませ、陶彫との同化を図ります。こうした象徴世界に辿り着くまでに幾度となく具象の風景を篩にかけてきた結果が「発掘~丘陵~」なのです。

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