「魅惑のニッポン木版画」展

先日、横浜美術館で開催されている「魅惑のニッポン木版画」展に行ってきました。錦絵から現代に至るまで、日本の木版画は優れた表現と技術を持っていると私自身考えています。改めてその水準の高さに納得しました。印刷物として分業システムが充実していた江戸時代から明治時代にかけて錦絵がその高水準を誇り、また創作版画が始まってからは、作家自らがあらゆる作業に関わって深い表現を会得しています。日本人の体質と木材は合うのでしょうか。小林清親や川上澄生の文明開化を匂わせる画風や棟方志功や恩地幸四郎の斬新な構成、北岡文雄のプロレタリア風の具象世界、さらに若い世代の桐月沙樹に見られる木目を生かした繊細な画風など、ひとつずつ作品を挙げたら際限がなくなってしまいます。自分は今になって銅版画に興味を持っていますが、かつて親しんだ木版画も、時間が許せばもう一度試みたい願望があります。木版画は何といっても摺りが気持ちいいと感じます。和紙に絵の具が染み通っていく感覚にハマってしまいます。そんな作品が220点以上も並んでいれば、自分の内なる力が漲っていくのを感じます。改めて版画好きな自分に気づきました。

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