「K・ツィメルマン ピアノリサイタル」
2013年 12月 12日 木曜日
胡弓奏者である家内は、時に秀逸で豊潤な音楽を聴きたくなるらしく、「クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル」のチケットを予約していたのでした。私は勤務が終わってから、家内と待ち合わせをして、会場である横浜みなとみらいホールに向かいました。演奏が始まると忽ち私はクリスチャン・ツィメルマンが天才肌のピアニストだと感じました。もちろんクオリティを高めるための絶え間ない努力はあると思いますが、音環境が至高に到達しているせいか、聴衆一人ひとりの内面世界に様々なイメージを抱かせているようにも思えます。漣のように、時に怒涛の如く緩急を織り交ぜた曲想がありました。音が連なる流れの中で、自分は眼を瞑っていると西欧の街並みが見えてきて、その構築の中に匂い立つ文化や宗教が立ち現れてくるのをイメージしました。ベートーヴェンの後期3大ピアノソナタという演目が、そうイメージさせたものかもしれません。ピアノソナタ30番、31番、休憩を挟んで32番のみ、アンコール曲はなし。当日配布されたものはパンフレットではなくA4版に演目の印字された白い紙のみ。余分なものは全て削ぎ落として、3曲だけに全てを費やし、それだけで聴衆を魅了し満足させる実力がクリスチャン・ツィメルマンにはあると感じました。音楽に生命を賭けているのでしょう。一人の芸術家が一つの表現に全てを注ぎ込んでいる生きざまを見て、今宵はとても快い気分になりました。
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Tags: イメージ, 音楽
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