衝撃のキュビズム紋

「キュビズム手法でデフォルムされた井寺古墳型紋様と、単純な直線と円弧が単にコンビネーションで描かれただけの紋様は厳密に区別されるべきものである。井寺古墳のようにキュビズム的手法でデフォルムされ、再構築された紋様は、ここではとりあえず『キュビズム紋』と呼ぶことにする。」と主張する「渦巻紋と輪廻転生」(藤田英夫著 雄山閣)に自分はまだ拘り続けています。本書の論考が自分のツボに嵌ってしまいました。縄紋文化はますます自分を魅了していて、続けてNOTE(ブログ)に掲載することにしました。キュビズムとは形態の革命で、具象絵画がひとつの視点で描かれたのに対し、複数の角度からモノのカタチを描いて、それをひとつの画面に収めたものです。これはルネサンス以来の一点透視法を否定し、20世紀以降の芸術に活路を見出した方法です。ピカソの「アビニヨンの娘たち」が描かれたのが1907年、ピカソとブラックが共にキュビズムを追求したのが1909年ですから、まさに20世紀初頭の芸術革命でした。それが我が国の縄紋時代に同価値観をもって抽象が行われていたとなると、これは衝撃という他にありません。私たち日本人は土着の縄紋人と渡来した弥生人、その他諸々の民族が混血して成り立っているので、縄紋人が直接の祖先というわけではありませんが、芸術的に優れた文明の曙期があったことは自分にとって嬉しい限りです。本書を読み終えた後も縄紋文化関連の書籍を探してみたいと思っています。

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