「解放」ベン・シャーン

自作にも「構築~解放~」という作品がありますが、ここで取り上げるアメリカ人画家ベン・シャーンによる「解放」は、象徴的な名作です。これは第二次世界大戦中のフランス解放をテーマにして描かれたガッシュによる絵画で、内容は瓦礫の中で遊ぶ子どもたちの情景です。図録によると、子どもたちは仮面のような表情をしていると書かれています。確かに子どもに表情はありません。楽しく遊んでいるはずが、絵に近づいてみると孤独を湛えた無表情な子どもの顔に異様さを覚えます。これが本当の意味の「解放」なのか疑問に感じるのは私だけではないはずです。「解放」されても楽園がくるとは限らないと頭の隅で私も考えて「構築~解放~」を作ったように記憶しています。ベン・シャーンはもっと直接的で具体的です。「象徴とは…戦争が私に与えた虚無と荒廃の意味を形にし、戦争の非道さをくぐりぬけて生き抜こうとする人間の小ささを形にする、たった一つの方法になっていた」とベン・シャーンは語っています。大きな悲劇の中で、それでもなお生きていこうとする人間の意志、それが人間の心の「解放」なのかもしれません。

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