「無限の網」を読む

表題は草間弥生著「無限の網」(作品社)で、水玉や網が増幅していく大掛かりな造形作品をパワフルに作り出している女性アーティストの自伝です。草間弥生という作家は、ちょうど30年前の自分の学生時代に、南天子画廊から出版された「快楽宣言」(篠田守男著)の中にあった一文と写真で知った作家です。アメリカで大変な評価を受けた人で、確かに「無限の網」の本文にある通り、日本ではスキャンダラスな側面で捉えられていました。本書を読むと、かなり若い頃から神経を病んで、自己治癒のために芸術に没頭している有様が伝わります。常軌を逸した表現世界は見る側を圧倒して、その仕事量は凄いの一言に尽きます。自伝の中で面白かったのは、米人アーティストの評論家が書く評論ではなく草間弥生だけが知る彼らの生き様です。現代美術史に名が残っている人たちが、身近な存在として感じられたのがとても楽しく、また興味津々でした。草間本人が美術家か小説家になるか迷ったと本書にある通り、卓抜した文章に畳み掛けるような勢いがあって、瞬く間に一冊読み終えてしまいました。

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