「十大弟子立像」写実の面白さ
2016年 11月 18日 金曜日
昨日に続いて、東京国立博物館平成館開催中の「禅ー心をかたちにー」展で、心に響いた作品について述べてみたいと思います。今回取り上げたのは、やや小さめの仏像が10体並んでいた「十大弟子立像」です。全体のプロポーションを漫画サイズにしたような按配で、一体一体のキャラクターが全面によく表れていて、思わず立ち止ってしまいました。この写実的な造形は運慶かなぁと思いましたが、どうでしょうか。図録によると「十大弟子立像」は京都嵯峨野の鹿王院が所蔵している仏像で、たびたび破却の憂き目にあったようです。「腰をかがめて右手で沓の縁をつかむ像、伏せた両手を腹前で重ね、顔を左に向ける像などの動きは十大弟子立像には異例である。羅漢像の一部が残った可能性が高いが、こうした姿勢は羅漢像にも見当たらない。老若やそれぞれの個性的な容貌、動きのある姿勢を巧みに表現している。表情に生気があり、現実感に富む作風から鎌倉時代半ば頃の慶派仏師の作とみられる。」と作品解説が図録に掲載されていました。とにかく写実の面白さ満載で、ユーモラスでさえありました。慶派の仏師の作品は、西欧の彫刻に通じる表現があって、学生の頃から西欧文化に馴染んでいる自分は、形態把握に懐かしささえ感じるのです。「禅ー心をかたちにー」展で、「十大弟子立像」に目が留まったのは、技巧的な掌握が容易であったことばかりではなく、そこに人間らしさを見て取り、他者に対する悩みの共感やら説法に十大弟子が励んでいた様子が伝わったからです。
関連する投稿
- 牟礼の地に思いを馳せて… 東京都美術館で開催されている「イサム・ノグチ […]
- 平塚の「柳原義達展」 コロナ渦の影響で、最近は展覧会が閉幕するまで行こうかどうしようか迷っている傾向があり、また急遽思い立って展覧会に出かけるため、僅かな日程を残した状態でNOTE(ブログ)にアップすることが少なくありま […]
- 上野の「イサム・ノグチ 発見の道」展 先々週、家内と東京上野にある東京都美術館で開催中の「イサム・ノグチ […]
- 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
- 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
Tags: 展覧会, 彫刻
The entry '「十大弟子立像」写実の面白さ' was posted
on 11月 18th, 2016
and last modified on 11月 18th, 2016 and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.