「権鎮圭」の彫刻展

先日「河口龍夫展」に行った際、もうひとつ注目している展覧会が「河口龍夫展」と同じ東京国立近代美術館で開催されているので、併せて見て来ました。それは「権鎮圭展」。韓国籍で日本に留学して彫刻家としてスタートした権鎮圭は、具象彫刻から抽象レリーフまで幅広く制作し、晩年は韓国で活躍していたようです。51歳で自ら命を絶ったこと、時代は違うけれど、自分と同じ学校の彫刻科に学んでいたこと等、作品以外のところで注目をしていました。しかし、実際の作品では人物塑造が気にかかり、その構築性のあるリアリズムに感銘しました。自分を振り返れば、自分は彫刻科で人物塑造しかやらず、ひとつを深めれば、全てに通じると信じて疑いませんでした。権鎮圭の彫刻を見ていると、世代は代わっても脈々と繋がるリアリズムの世界があって、当時自分が無心に取り組んでいた彫刻という表現の何たるかを思い出していました。自分にとって基礎基本はここにあるという認識を持ちました。現代アート、空間造形、インスタレーション等が氾濫する中、粘土で彫刻を作るというアカデミックともいえる表現が、新鮮さをもって自分の前に忽然と現れたという感じでした。

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