「死と生の遊び」を読んで

表題は酒井健著「死と生の遊び〜縄文からクレーまで〜」(魁星出版)で、書店で本の中を捲ると自分の好きな作品ばかり集めた評論集だったので、早速購入しました。扱っている作品は絵画や建築や工芸など多岐にわたっています。それら作品を貫くものが全ての作品にある「死」の存在。それ故「生」が際立つことを論じています。自分の中には無かった死生観ですが、論じられている作品が自分の傾倒する分野と一致するのは単なる趣味の一致ではないような気がしています。自分の心の奥底にもそうした闇があるのかもしれません。自分はまだ頭で解っていても、感覚がそこまで到達し得ないのではないかと考えます。近代西洋から渡来した啓蒙思想が近代日本にも浸透し、自分もそうしたモラルを教育された一人として、その範疇を超えない生き方が身についていて、自分の中に眠る不可思議な憧れに似た何かに近づくことが出来ないと感じる時があります。あるいは、創作行為によってその何かが解き放たれる時を待ち望んでいるのかもしれません。そんな思いに掻き立てられた一冊でした。                      Yutaka Aihara.com

関連する投稿

  • 風土から考える素材
    昨日NOTE(ブログ)で、気候風土の影響を受け、世界各地にはさまざまな暮らしがあり、そこにある住居が美しいということを書きました。建築素材にしても世界各地では木材や日干しレンガや藁土といった各地で産出される素材を使ってい...
  • 「もの派」を考える
    素材に何も手を加えず、ギャラリーの空間に放置する展示方法を自分はどのように考えるか、現代に至る造形思想史を辿れば、「もの派」の登場した背景がわかりますが、これを美術に関心の薄い人々はどう見るのでしょうか。もっとも私の非対...
  • 「擬似幾何学的」なブランクーシ
    現代彫刻の父ブランクーシに関する文献に出会うと不思議な興奮を覚えます。NOTE(ブログ)にも何回か登場したブランクーシですが、自分は若い頃にルーマニアに何度か出かけ、木造民家の柱に見られる呪術的で抽象性を伴う浮き彫りにブ...
  • 夏気分を惜しみながら…
    今日で8月が終わります。月が変わることに郷愁を感じるのは夏の特徴かもしれません。開放感あふれる夏だからこそ流行り歌にもなり、移ろう夏気分を惜しむ情景になるのだと感じます。今月の創作活動を省みると、とにかく暑い工房の中で滴...
  • オブジェの評論集を読み始める
    「問いなき回答 オブジェと彫刻」(建畠哲著 五柳書院)を読み始めました。自宅の書棚に眠っていた書籍で、一度読んでいるかもしれないと思って読み始めましたが、どうやら購入したまま書棚に仕舞いこんでいたことがわかりました。目次...

Comments are closed.