「死と生の遊び」を読んで

表題は酒井健著「死と生の遊び〜縄文からクレーまで〜」(魁星出版)で、書店で本の中を捲ると自分の好きな作品ばかり集めた評論集だったので、早速購入しました。扱っている作品は絵画や建築や工芸など多岐にわたっています。それら作品を貫くものが全ての作品にある「死」の存在。それ故「生」が際立つことを論じています。自分の中には無かった死生観ですが、論じられている作品が自分の傾倒する分野と一致するのは単なる趣味の一致ではないような気がしています。自分の心の奥底にもそうした闇があるのかもしれません。自分はまだ頭で解っていても、感覚がそこまで到達し得ないのではないかと考えます。近代西洋から渡来した啓蒙思想が近代日本にも浸透し、自分もそうしたモラルを教育された一人として、その範疇を超えない生き方が身についていて、自分の中に眠る不可思議な憧れに似た何かに近づくことが出来ないと感じる時があります。あるいは、創作行為によってその何かが解き放たれる時を待ち望んでいるのかもしれません。そんな思いに掻き立てられた一冊でした。                      Yutaka Aihara.com

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