6月RECORDは「浸潤の風景」

「浸潤」というのは、あまりいい意味では使われないコトバです。「肺浸潤」という病名があり、それは結核菌におかされた肺の一部の炎症が広がっていく疾患です。浸潤の単純な意味では次第にしみ込んで広がることを指しますが、それは液体に限らず、思想などの場合にも使われるコトバでもあります。水彩絵具が紙にしみ込んでいく状況を、絵画的な発想ではその効果を利用して何かを表現することは屡々あります。面白いなぁと思ったのは、5月17日にアップしたNOTE(ブログ)にある彫刻家若林奮の絵具に対する考え方です。「若林は絵具やインクを紙にしみこませ、『紙の厚さを彩色する』ことを試みる。」(江尻潔著)という発想は、明らかに画家のそれではなく、彫刻家の浸潤に関する捉えです。私自身は自作を考えると、彫刻的な要素と絵画的な要素が混在しているため、その双方に理解を示していますが、若林奮流の考え方に妙に納得してしまうことがあります。絵具を幻想化の表現として使うものではなく、あくまで実材として扱うと、浸潤という効果が平面ではなく、空間を伴う立体として立ち現れてくるように感じます。今月のRECORDに選んだテーマである「浸潤の風景」には梅雨の季節を迎える気分もあり、水に覆われた世界とそれが浸透していく状態をどう表現しようかという意思も働いています。滲ませたり、しみ込ませたり、線描写というより絵具中心の画面になりそうです。今月もRECORDを頑張っていきたいと思っています。

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