映画「チューリップ・フィーバー」雑感

昨晩、常連にしている横浜のミニシアターに「チューリップ・フィーバー」を観に行ってきました。先日、東京上野にある上野の森美術館で開催されている「フェルメール展」に行ったばかりで、私は17世紀オランダの風俗に気持ちが浸りきっていて、フェルメールの絵画から抜け出したような映像が売りの「チューリップ・フィーバー」を観てみたくなったのでした。物語は孤児のため修道院で育った若い女性ソフィアと、初老で裕福なコルネリアスが結婚するところから始まり、その後なかなか跡継ぎが出来ずにいた夫婦生活に、肖像画を頼まれた若い画家ヤンが登場してきます。ヤンとソフィアが不倫に走るのと並行して、当家に仕えるメイドのマリアは魚売りと密通し、妊娠が発覚するのでした。ソフィアはマリアの妊娠を利用してある計画を思い立つのですが…。そんな主軸の物語に加えて人々が一攫千金に狂気するチューリップ・バブルがもうひとつの物語を牽引します。貴重な縞模様のチューリップの品種は高値で取引され、取引場所となった酒場の奥は、投機家たちの興奮の坩堝と化していたのでした。マリアのために財産を作りたい魚売り、ソフィアを強奪したい画家のヤンを初め、チューリップの球根に翻弄される男たちの野望が渦巻く場面がありました。17世紀ネーデルランド(オランダ)はスペインから独立し、経済的な繁栄を極め、黄金時代に突入します。その中で投資の対象となったチューリップと絵画が大流行した背景が本作にはありました。レンブラントやフェルメールが活躍した時代は、こんな感じだったのかなぁと思わせる演出があり、映像はまさにフェルメール絵画を意識していて、室内に差し込む光や、窓辺で手紙を読む若い女性がフェルメールの描いた世界そのものに感じました。「フェルメール展」を既に見ていた私は、あの絵画のシーンが動画になっていることに夢中になりました。きっと絵画ファンも映画に惹きつけたくて、監督は「チューリップ・フィーバー」を制作したのだろうと思います。

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