「感覚内容の構成」について
2018年 10月 2日 火曜日
「経験の構造 フッサール現象学の新しい全体像」(貫茂人著 勁草書房)の第四章「感覚内容の構成」について、気になった箇所を引用いたします。本書は難解な箇所が多く、章をまとめることは至難の業で、その都度述べられている主旨をチェックするくらいしか出来ません。初めに「感覚与件」や「感覚内容」について抜き出します。「感覚与件論者は、感覚はすべての知覚に先行する知覚成立の必要条件であり、したがって逆に、知覚は感覚に何かがつけ加わることによって成立すると考える。感覚につけ加えられるとされるのは、認識主観から発する解釈や意味づけであり、こうして『知覚解釈』説が導かれる。~略~感覚与件は、意識内から発生したとは考えられないため、『どこから与えられるのか』という問いがどうしても浮上する。~略~感覚与件が経験において果たす役割を問題にしたとき、『単なる志向が感覚与件によって充実され、その結果志向の正しさが確証される』とみなす考えが導かれる。」本書は具体的な例を挙げながら論理を展開しているのですが、書き出す箇所から具体例を除いているので、文章としては難解にならざるを得ません。次の文章も突如引用したように思われますが、前後のない文脈の中なのでご勘弁いただければと思います。「諸感官やキネステーゼ、状況などの変化に応じて変化する感覚的質によって充実した直観内容をフッサールは『感性的図式』とよぶ。カントの場合、『図式』は感性の多様と悟性形成を結合する機能だが、フッサールにおいては、主観側、客観側の諸条件毎に変化する感覚的質相互が結合されたものが感性的図式である。」これはもう現象学の説明というよりは、私事のメモとして書いていると言った方がいいかもしれません。この章ではその後、ゲシュタルト心理学や超越論的連合概念に触れています。章の最後の「受動的綜合の分析」としてフッサールの言葉を引用した文章がありました。「『意識にとって構成されたものが私にとって存在するのは、ひとえにそれが触発することによる』。~略~こうして『際だった感覚的統一』の形成には、触発というダイナミックな連合の働きが先立つことになる。触発と喚起、感覚的統一、際立ちは、一つの現象の四つの側面である。」今回はこのくらいにしておきます。