2015年はフロイトに挑む

ジークムント・フロイトはウィーンに関わりの深い20世紀最大の精神分析の権威です。私は1980年から5年間ウィーンに滞在していましたが、フロイトの業績に触れることなく過ごしていました。フロイトの存在は知っていました。あまりにも偉大な学者で、自分の辿々しい幼稚なドイツ語では太刀打ちできないと、初めから思っていたので、原書を開くこともなく、自分の得意とする芸術以外の専門分野には、敢えて近づかないことにしていました。今回読もうとしているのは、フロイトの有名な著作「Die Traumdeutung」です。自分が日本での学生時代にフロイトの概観を辿った時は「夢判断」と邦訳されていた著作ですが、deutungには「解釈」という意味もあり、中公クラシックスから刊行されている「夢解釈」(フロイト著 金関猛訳 中央公論新社)上・下巻を読むことにしました。本書の前書きで「判断」より「解釈」が適当とする一文がありました。読んでいるうちにその意味するところもわかるでしょう。読書にどのくらい時間がかかるものか、時として途中で浮気をして軽い書籍を差し挟むこともあろうかと思います。昨年のハイデガーに続く今年のフロイト。原書はドイツ語でありながら、まるで境遇の異なる世界で活躍した2大思想家。ただし学問の追究に民族の壁は存在しません。それは芸術文化も同じです。フロイトが唱えた学問は、精神分析学や臨床心理学となって、現在の職場にも応用され、身近な医療になっています。その源泉を辿る思索の旅に出るのは、現在の自分にとって充分意義のあることだと考えます。この書籍を通勤時間の友にするのには、あまりにも気難しい友と言わざるを得ませんが、じっくりと時間をかけて付き合っていこうと思っています。

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