世田谷の「フリオ・ゴンザレス展」

先日、東京の世田谷美術館で開催中の「フリオ・ゴンザレス展」に行ってきました。スペインの彫刻家フリオ・ゴンザレスは、自分の中では未知の作家でした。飄々とした鉄の構成的な彫刻をポスターで見て、これを実際に見てみたいと思ったのでした。図録の年譜を見ると、ゴンザレスは1876年バルセロナに生まれて1942年にアルクイユで没しています。享年65歳。19世紀末から20世紀初頭に生きた彫刻家だったわけです。同郷故かピカソとの交友関係が頻繁で、ゴンザレスの芸術家としての刺激剤は、どうやらピカソだったと言っても過言ではありません。金工職人の家系だったため、金属の装飾を作って生活をしていたらしく、職人としての技量で多くの芸術家の技術的サポートをしていたようです。現代彫刻の父ブランクーシのブロンズ作品の研磨を手伝っていたことも図録にありました。ゴンザレスは最初画家を目指し、50代半ばに差し掛かったところで彫刻家になりました。鉄を素材に取り入れた彫刻は、新しい時代の幕開けとなり、その後に続く現代彫刻家に影響を与えています。ゴンザレスが残した連作の中で、とりわけ私は鉄の構成的な彫刻が気に入っています。鉄の棒を構成した「立つ人(大)」や鉄板を構成して空間を捉えた「アルルカン/ピエロ、あるいはコロンビーヌ」や「トランペット」やモニュメンタルな「ダフネ」が印象に残りました。鉄は重さがあると同時に、軽やかさが表現できる素材として、自分の憧れの素材のひとつです。錆が美しいと感じているところがあって、腐蝕され、やがて無くなっていく過程も自分の好きな要素です。そんな鉄に初めて着目して創作を展開したフリオ・ゴンザレスという彫刻家の足跡は、極めて大きかったと認識しました。

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