「西洋の没落」読後感

「西洋の没落」をやっと読み終えて、一区切りつけました。1918年に書かれた本書は第一次世界大戦直後という時期でもあり、西欧の都市が破壊された状況を見た著者が、まさに没落していく西欧を目の当たりにしたことが契機となって書き上げたようです。現在、西欧諸国はEUとして経済等で連携しあう関係になっています。ファウスト的魂の「没落」はあっても当然ながら西洋の滅亡はなく、西欧諸国は日米または台頭する中国の国際競争の中にあって対抗力をつけようと模索しています。本書はひとつの政治・経済・宗教・文化等がまるで季節が巡るように萌芽し、やがて没落していく過程を描きだしましたが、現在、国際流通はますます盛んになり、情報化時代の到来とともに、人々は世界的視野で物事を捉える時代にあり、新たな関係構築が世界各国の思惑となっていて、西欧諸国を巻き込んだカタチで混沌とした時代を迎えています。また、インターネットがあれば机上から世界が見え、マスコミにより世界各地の情勢はビジュアルな媒体を通して瞬時に目に飛び込んできます。そこで見えてくることは民族や宗教・文化に関係なく政治の事情で国境が引かれ、それ故に地域での紛争が絶えない現状です。一触即発の危険を孕みながら血族伝統は歪みつつ生き続けて、歴史を振り戻そうとしているかのような動きも感じます。没落というならば西洋に限ったことではなくなっているのが現代で、日本も世界的に見れば経済や教育分野で第一線からやや下降傾向を辿り、政治の在り方では恥ずかしながら論外と言わざるを得ない現状があります。本書曰く歴史には予定された運命があり、やがて円環をなすというならば、今後未来に向けた国際社会の在り方が築かれてくるのでしょうか。地域性や人権が尊重される時代。理想的な世界観をもって、次なる季節を生きていければと思います。それほど長くは生きられない自分ではありますが…。

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