「木」という素材

祖父が宮大工、父が造園業という環境で育った自分の周囲には木材が豊富にありました。でも木の美しさに触れたのは自分の生育歴からではなく、滞欧中に訪れたルーマニアのマラムレシュ地方に点在する木の家々を見た時でした。柱の抽象的な装飾は彫刻家ブランクーシそのもので、生活に密着した美を認めました。帰国後は鎌倉や京都の寺院を訪れ、日本人が育んだ木造の美を再発見し、そこで初めて自分の環境が木とともにあったことを思い起こしました。それから自分の作品に木材を使うことになりました。木は湿潤な日本の風土が生んだ造形素材です。肌理細やかな細工に適していて、表面は様々な仕上げの方法があります。風雪に耐える強さも兼ねています。自分はあえて彫り跡を残した抽象形態を彫り上げています。木を彫るという作業は健康な精神状態を保つのにいいのではないかと思う時がかなりあります。最近は焦がして炭化させる面白さを知りました。木は当分の間、自分が関わっていく素材だと思っています。

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