抉り込まれた空間表現

若い頃に見たエーゲ海沿岸の遺跡に、今なお自分のイメージが囚われていて、新作の全体像が浮かび上がったり、天から降ってきたりするのは、決まって南欧の古代都市の荒廃した姿です。新たなイメージを纏った美神の降臨は、いつも現行の制作途中の過程で苦しんでいる時にやってきます。新作は月面にあるクレーターのような凹形の内側に刻み込まれた架空都市で、それを自分が得意とする錆色の陶彫を使って表現しようと思っています。大地にパノラマとして見渡せるような抉り込まれた景観をもつ集合彫刻です。これをどのように具現化するのか、技巧的な課題はここから始まります。円形の直径をどのくらいにするのか、一番外側の高さはどうか、陶彫で全体を覆うにしても木材による構造体は必要か、分割して陶彫部品を作ることにしてもどのくらいの部品が必要か、来年の図録撮影日までの制作工程を組む際に、どのくらいペースで陶彫部品を作らねばならないか等、考えると悩みが尽きません。でもこれが一番面白いところかもしれず、イメージに戯れる自分に幸せを感じる瞬間でもあります。

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