フォーヴィズムの思い出

高校時代に油絵を描き始め、最初に影響を受けたのが佐伯祐三でした。鋭く素早い筆致で描かれた風景画を見ながら、どうしてこんな空気を感じさせる雰囲気が出せるのだろうと思っていました。佐伯祐三画集にあったフランス人画家ブラマンクにも興味が出て、その周囲の画家グループを調べ、そこからフォーヴィズムという名称を知ったのでした。マチスの激しい色彩にも興味を持ったのですが、自分は色彩感が乏しく、何を描いても泥臭くなってしまうので、あえて色彩を表現の主流にしている画家を避けるようになりました。でも高校に通っていた当時、激しい筆致や色彩が自分の心情にあっていたようで、描けるものならこんな絵画が描きたいと思っていました。ただ画家になろうという気持ちはなく、建築家や工業デザイナーを希望していたことは確かでした。本格的にデッサンの勉強を始めてから油絵はまったく描かなくなってしまいました。デッサンはデザイナーになるための勉強と考えていて、その少し前までやっていたフォーヴィズム絵画の真似事とは結びつくことがなかったのです。アートという大きな括りの中で考えられるようになるのはもっと後のことです。

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