RECORD色彩試行

RECORDとは、昨年2月から始めている平面作品で、一日1枚のノルマを自分で課し、ポストカード大の厚紙にその日思いついたイメージを次から次へと描いています。今までは立体にするためのエスキースであったり、構造が見えるものを描いていましたが、この2週間はアクリルガッシュで画面に無造作に色彩を塗り、ドリッピングをしたり斑点を垂らしたりして下塗りをしています。一日1枚の課題として始めたRECORDですが、絵の具を無駄にしないため5枚まとめて下塗りをして、それから一日ずつ今月のテーマである幾何形体を描きこんでいます。ですから最近のRECORDは絵画性の強い作品に仕上がっています。今までの自作の傾向には見られない色彩がキラキラした世界です。色彩はずっと苦手意識があって、遠慮がちに使っていましたが、そろそろ苦手意識も克服したいと考えるようになりました。まだこの傾向で試行してみようかと思っています。           Yutaka Aihara.com

盆休み最後の作業

今日は涼しい一日でした。作業中に汗が出やすくなっているようで、涼しくても相変わらずシャツの替えが何枚も必要です。2メートルの杉の柱8本の荒彫りが今日終了しました。一日1本ずつ彫ったことになります。残るのは1メートル30センチほどの柱が12本。これはまた次の機会です。盆休みで毎日作業できたことが自分ではよかったと思いますが、家庭サービスもせず、母親に催促されながら亡父の墓前に線香をあげたくらいで、ほとんどが制作に明け暮れていました。制作は何かを犠牲にしているのかと思える時があります。親戚付き合いが悪いのも自分が時間に追われているせいだと思います。盆休みの時間は飛ぶように去り、ずっと杉の角材に目を凝らしている自分は何が楽しくてこんなことをやっているのかと自問自答することがあります。でも柱の1本を彫り終えた時、床に立つ柱から快い風が吹いてくるのです。そう感じるのです。今日もその瞬間がありました。それが創作の魅力かなと思い、さらに深化・継続の意思を固めてしまうのです。      Yutaka Aihara.com

眼を奪う建築の美

土曜の夜、ポスタカード大の「RECORD」を描きながら、ついTVに眼が奪われました。「美の巨人たち」で取り上げられていた建築家丹下健三の代々木にある流線型をした体育館。吊り橋構造で作られた美しい造形です。屋根はすべて曲面のため造船技術をもった人たちが参加したこと。内部の開放感が競技する選手と観客を一体にさせ、まさに当時の東京オリンピックの顔として話題になったこと。自分は高校時代、デッサンの予備校に通う途中にこの体育館があり、毎日この体育館の曲線美を見ながら通学していた頃を思い出しました。建築家になる夢はその頃はなくなっていましたが、不思議な美しさに魅了されていたことは確かです。その頃はまだ工業デザインをやりたくて、構成の課題が出ると、何となくこの代々木体育館の構造を頭に浮かべていた記憶があります。                     Yutaka Aihara.com

4人が創る「わたしの美術館」展

表題は横浜美術館で開催されている企画展です。各界著名人の4人、茂木健一郎、はな、角田光代、荒木経惟がそれぞれ自分なりの美術作品を選んで展示するという趣向です。横浜美術館の企画はなかなか面白く、地元の美術館としては誇りに感じるところがあります。今回も企画の力が大きい展示内容で楽しめました。実際の作品は横浜美術館が所蔵している作品が結構含まれていて、常設展でお目にかかる機会の多い作品ですが、視点を変えてこんな方法もあったのかと思ってしまいました。それぞれの選者の個性や仕事の上での美術作品との関わりが見えて興味をそそられました。蒸し暑い作業場から自分を解放して、夕方ちょっと訪れるには横浜美術館はとてもよい環境であり、またよい時間が過ごせる場所だと思いました。          Yutaka Aihara.com

EXHIBITION08がアップ

自分のホームページにこの夏に開催した銀座の個展の様子をアップいたしました。EXHIBITIONをクリックしていただけると、2008個展の会場写真に入れます。今回は3回目の個展なので、一昨年と昨年の比較もできます。作品が同じ表現形式であっても、会場の雰囲気は毎年違います。今回は大きな作品が一点のみという会場構成だったので、あっさりとしたシンプルな感じは否めません。自分はこの会場の空間を考えて、また来年に期待をかけるのです。来年はこんな雰囲気になるのではないか、こんな主張をしてみようと現在進行中の作品と照らし合わせながらイメージしていきます。作品を見せる、その場で感じ取る、思索する、印象を振り返る等が作者と鑑賞者の間にある関係で、その演出をしてくれるのがギャラリーです。来年に望みをかけながら、明日も制作に没頭です。なお、自分のホームページにはこの文章の最後にあるアドレスをクリックしていただけると入れます。ぜひご高覧を。                             Yutaka Aihara.com

ヴァイオリズムを考えながら…

いつぞやのブログに書いた記憶がありますが、一日のうちどんな場面で作業が捗るのかを考えることがあります。昨日ブログの話題にした汗以外の気づきです。いわば制作のヴァイオリズム。集中力が増す時は、ほとんどの場合に空腹時です。今夏民間企業派遣研修で造園土木会社に行って、外仕事をした時は10時、昼食時、15時に休憩がありました。これは労働のヴァイオリズムを考えた休憩時間だと思いました。室内で木を彫る作業も10時近くに休憩、12時近くに昼食をとりながら休憩、15時は作業を終えて清掃をしながら休憩となります。仕事が進む時はこの休憩時間前、つまり空腹時にやってくるのです。朝は9時半くらいから仕事の波に乗り、昼前の11時くらいに2度目の山場を迎え、最後は14時から15時の間がピークになります。お茶菓子を食べたり、食事をとってしまった後はちょっと仕事に入るのがつらい時間帯です。そんなことを考えながら、ヴァイオリズムをコントロールして制作をしている毎日です。                  Yutaka Aihara.com

精神の汗 肉体の汗

猛暑日が続く中で木彫をやっている自分は、汗をかくことばかりの毎日で、夜HPを立ち上げてブログを書こうとしても何も頭に浮かびません。いつも汗のことばかりを話題にして申し訳ありませんが、制作における汗のかき方に違いがあることに気づきました。杉の柱を前にどんな形態を彫り込むか思案して寸法をとっている時にかく汗、下書きが出来て実際に鑿や木槌を振るって彫り込んでいる時にかく汗。汗にはこの2種類があって、吹き出る量が違います。どちらが多いかといえば、前者の思案している時にかく汗の方が多いのです。考えをめぐらせ、気持ちが緊張している時の汗です。いわば精神の汗。これは一気に吹き出てきます。制作に限らず、何か緊張を強いる時はすべてそうだと思います。逆に身体を使って作業している時の汗は、時間をおってジトジトと出てきます。いわば肉体の汗。と、まあこんなことをボンヤリ感じながら一日を過ごしています。作業中の気づきはまだあります。それはまた次回。                          Yutaka Aihara.com

ケーテ・コルヴィッツの肖像

暑い作業場から空調のきいた自宅に戻ると、疲れがどっと出るのですが、この夏は読書も欠かさずやっています。ちょうど読み終えたのが志真斗美恵著による「ケーテ・コルヴィッツの肖像」です。あわせてコルヴィッツの日記も読んでいるので、2冊を行きつ戻りつしながら、まずは表題の本を読み終えました。学生時代に衝撃を与えられ、自分の木版画作りのきっかけになったドイツ人画家ケーテ・コルヴィッツ。ただ自分には政治色のある社会派作品の中で生命を謳いあげるコルヴィッツの表現が、理解できても感受することができず、その頃の木版画は途切れてしまいましたが、今までコルヴィッツの直接的に働きかけてくる生命に対する強い表現にずっと関心を寄せていました。この本でコルヴィッツの生育歴や家庭環境、仕事に臨む時の真摯な姿勢が伝わってきて、作品そのものの理解も深まった気がしています。戦争の時期に生きた女流画家。母として妻として、または社会参画する芸術家としての生きざまがよく描かれていました。               Yutaka Aihara.com

安全対策マニュアル

今日も蒸し暑い作業場で木を彫っています。肉体労働をしている作業員のような気持ちでいます。暑さの中で安全対策を怠らない姿勢を貫いています。水分補給、しっかりと昼食をとること、適度な休憩を心がけています。先日民間企業派遣で造園土木会社に研修に行った時の心得が生きているなと思っています。そこで配布された安全対策マニュアルは、彫刻の制作にも有効です。木を彫る作業は創作であり、また労働でもあるのです。自分が彫刻を選んだ理由はそうした身体を使う作業が向いていると思ったからです。哲学的な思索を要求される一方で、実材にぶつかっていく魅力。それは頭でっかちにならない表現方法でもあるのです。そこに実際の場面で派生する安全への配慮。安全対策マニュアルは集中力を司る頭脳に対し、この時季一気呵成に作り上げることへの身体への警告だと思っています。身体を省みず作業を行えば危険な状態になる、逸る気持ちを抑えて集中を持続することが大切だと自分ではマニュアルを解釈しています。 Yutaka Aihara.com

制作三昧の夏到来

今日のブログにはこんなことを書こうと思案していても、一日彫刻制作の作業を終えて帰ってくると、頭には作業場の熱気しか残らず、日々汗を掻き通しで、身体は大丈夫かなという感想しかありません。2リットルの水を凍らせて持ち込み、汗でびっしょりになったシャツを何枚も替えて、今は後先を考えず杉の柱を彫っています。これぞ制作三昧の夏が来たという感触です。しかも集合彫刻なので、全体を見渡すことはまだ先で、今はひたすら部分を作っている状態です。近視眼的な作業はある意味で気が楽なところがあります。前述した後先を考えずに…というのがそれに当てはまります。今は柱に連続した幾何形体を彫り込むこと、この一点に集中して身体を動かしています。それにしても暑い、でも止めるわけにはいかない、焦らず休まず坦々と。仕事の蓄積が成果を生むことを信じてやっています。        Yutaka Aihara.com

五輪開会式イベントに酔う

北京オリンピックが今日開幕し、テレビに釘付けになっています。自分には健康管理のためにやっている水泳があるので、競技で言えば水泳を見たいと思っているのですが、もっと関心が高いのが開会式のイベントです。極端なことをする国なので、どんなイベントを準備しているのだろうと思っていましたが、人海戦力と物量の凄さに圧倒されました。中国の歴史を映像を駆使して見せる場面で、とくに自分の中では活版印刷や海のシルクロードの群舞が印象的でした。自分の造形表現にも通じるものがあって、食い入るように見てしまいました。一人で作品をコツコツ作っている自分が空しくなるような膨大な物量と壮大なスケールがあって、歴史ある国の威信をかけた一大イベントだということがよく解りました。では東京ならどうするだろうと思いを巡らし、自分ならエコを考えた工夫があってもいいのかとも考えました。ただの見せ物では終わらないモノ。再利用価値があり、オリンピックという祭典が去っても、有形無形文化財として残るモノ。オリンピックという非日常が、そのまま日常生活にも続き、その元気・活性化が様々なところで広がるようなそんなイメージを抱きながら、このイベントにはどの位のゴミが出て、どの程度が資源化されるのだろうと考えてしまいました。 Yutaka Aihara.com

RECORDの追加がアップ

昨日ブログに書いたRECORDが、HPでまた2か月分アップいたしました。昨年やっていた8月分と9月分です。連続するカタチであったり、穴のあるカタチであったり、昨年はとくに月ごとのテーマはなく、その日の気分で前日のテーマを追ってみたり、新たに別の世界を始めてみたりしていました。絵の変わり目がきちんと決まっていない面白さがあると改めて思い返しています。最後につけるコトバも月ごとの一貫性がないため、その月のどこかの作品を見てやっています。それに比べ今年は計画性を意図したため、手枷足枷があって、なかなかきついなあと思っています。自分がそんなふうに決めて、自分で苦しんでいるのですが、作品が果たして深まっているのかどうかよくわかりません。ただ、月ごと全体で見ると統一感があると思うのです。これはまだHPのアップは先になりますが、1年間まとまったら、どこかで展示してみたいと考えています。なお、HPにはこの文章の最後にあるアドレスをクリックしていただけると入れます。            Yutaka Aihara.com

RECORDは「楕円形」

8月のRECORDのテーマは「楕円形」にしました。RECORDとはポストカード大の平面作品のことで、一日一枚をノルマにして毎日作っているのです。ちょうど日記のような小さな世界です。RECORDはHPに月ごとにアップしています。HPに入っていただければ昨年の作品を見ることが出来ます。そこで今月の「楕円形」ですが、ラグビーボールのようなカタチではなく、長方形の角がとれたようなカタチにしました。膨らみはありません。膨らみのある楕円形もいずれ試みようと思いますが、今月はやや硬質な感じを与える楕円形を選びました。今まで幾何形体をテーマにして抽象的な構成をやってきましたが、ここにきて具体的なイメージで作品を作りたくなっています。何かの部分を表しているような、または心象風景のような世界を楕円形を織り交ぜて表現しようと決めました。これで今月も試行錯誤を楽しもうと思います。                         Yutaka Aihara.com

柱に彫り続ける抽象

今日も暑い作業場で杉の柱と対話するように彫っています。あらかじめ寸法を決めておいた菱形の形態を繰り返す荒彫りをしていきます。どうも以前ブログに書いたブランクーシの「無限の柱」が頭にあって、基本はまずそこから始めるといった具合です。ブランクーシの「無限の柱」のモテーフは、彼の出身地ルーマニアの伝統的な建築物から想を得ています。自分もパリに保存されているブランクーシのアトリエを見た後、紀行作家のみやこうせいさんに連れられてルーマニアに行き、ブランクーシの造形の原点を見てきました。そんな20代の記憶があって、彫刻を考える上での基本的形態をいつもブランクーシにしているのです。実際、繰り返される抽象形態はとても美しく、無限に上昇していくようです。今制作中の「構築〜起源〜」はそんな上昇する柱が無数に大地から立ち上がるイメージです。蒸し暑い作業場で、そんなブランクーシやルーマニアの木造民家のことを思い描くと、頭の中がスッキリしてくるから不思議です。                   Yutaka Aihara.com

汗が滴る作業場にて…

昨年の夏も同じようなブログを書きましたが、今年も空調のない作業場の蒸し暑さを書かないわけにはいきません。木彫が始まると木屑が飛び散り、汗が滴り、シャツを何枚も替えて作業に取りかかっています。汗が吹き出て、水分も補給するので熱中症にはならないかなと思いつつ、自分に課した一日のノルマを達成しようと無理をしてしまいます。今日の横浜は今夏最高の気温だったそうで、なるほど鑿を振るっていると、生暖かい空気の中で呼吸が苦しくなるような気がしました。先日まで研修に行っていた造園土木の会社は炎天下の除草作業で、やはり汗が滴りましたが、言われるままに動いている気安さがありました。自分が今進行中の創作行為は、室内での作業とは言え、イメージをしつつ考えて彫り進む作業で、これはこれなりになかなかつらいところがあるのです。明日も汗の滴る作業場に来て、木を彫る予定です。無理をしないように、自分にそう言い聞かせながら頑張ります。   Yutaka Aihara.com

新作「構築〜起源〜」準備

今日こそ新作の準備に取りかかりました。タイトルは既に決まっていて「構築〜起源〜」とつける予定です。銀座の個展に出品した「発掘〜遺構〜」の台座に使った杉の柱48本を利用する計画です。というより杉の柱は「構築〜起源〜」として作っていたもので、これを「発掘〜遺構〜」に逆利用したと言った方がふさわしいかもしれません。そこで杉の柱は48本に終わらず、長短合わせてまだまだ彫る予定です。100本か、それ以上か時間が許す限り彫り続けます。柱の半分は焦がして炭化させるのも同じです。床から幾本も森のように立ち上がる構想があるのです。以前に作った「構築〜包囲〜」や「構築〜解放〜」の前段階(プロローグ)として位置づけられる作品と考えています。また鑿や鋸と付き合う生活が待っています。本格的には明日から。今日は下準備をいたしました。                Yutaka Aihara.com

同僚の写真展へ…

今日から新作を作るつもりで作業場に足を踏み入れたところ、どうにも気分がすぐれず、個展の余韻やら民間企業派遣研修のインパクトが強かったせいか制作へのモチベーションが上がらずにいました。今日は制作休業日にして、東京青山でやっている同僚の写真展にお邪魔することにしました。写真展を開催しているのは自分と同じ横浜市公務員の女性で、彼女は自分と同じ美大の彫刻科出身なのです。写真と言っても、壁を接写したもので、ほとんど抽象絵画のような美しさを狙ったものと思えました。普通に考える風景や人物の写真とは異なる世界です。壁の一部分に潜む意外な美の発見。落書きは偉大なアート、そこにミロやクレーやポロックがいるような錯覚におち、何ともいい気持ちにさせてくれる世界でした。地下鉄銀座線外苑前下車、ギャラリーDAZZLE、8月10日まで開催中。            Yutaka Aihara.com

8月 企業派遣研修終了

横浜市公務員としての民間企業派遣研修が最終日を迎えました。炎天下の土木作業に従事し、造園職人さんたちと暖かい交流が持てました。外仕事のせいで顔から首が日焼けで真っ黒です。初日は身体が火照っていて、寝苦しい夜を過ごしましたが、翌日からはグッスリ眠ることができました。造園土木会社の人たちの優しさと、本音でものを言える屈託のなさが、1週間ずっと気持ちよく研修をさせていただいた要因だろうと思います。本当にお世話になりました。さて、今日から8月になりました。個展、企業派遣と続いていたスケジュールがなくなり、そろそろ彫刻の新作作りを始めようと思っています。この8月が新作にとって重要な1ヶ月になります。いつもより1ヶ月遅いスタートですが、頑張っていこうと決めました。気分的にも熱い夏、身体にとっても暑い夏はまだまだ続きます。 Yutaka Aihara.com

「クレーの旅」を読んで

新藤信・文「クレーの旅」を読みました。写真図版が多く旅のイメージが捉えやすい冊子です。クレーに限らず芸術家が旅で得る情報、体験がいかに大切なものかがよくわかりました。クレーの場合は、北アフリカのチュニジアで目のあたりにした色彩がその後の作品に影響を与え、またヨーロッパ的な絵画技法から離れていこうとする意思が感じられます。不思議な文様のような、また記号化された形象が培われたのは、まさに生まれ故郷ではなく、旅で出合った風景やその印象であったと思っています。自分の場合も昔住んだヨーロッパの旧市街の影響が作品作りに欠かせない要素として、ずっと脳裏にあります。そろそろ作品を展開したい欲求に駆られています。クレーのような有効な旅をしたいなと考えるこの頃です。 Yutaka Aihara.com

画家ニコ・ピロスマニ

先週行った渋谷のBUNKAMURAザ・ミュージアムで、ロシア素朴派画家のニコ・ピロスマニの作品に出会いました。ピロスマニという画家を知ったのは20年以上も前に見た映画でした。たしか岩波ホールだったか記憶がはっきりしないのですが、ピロスマニの絵画そのもののような朴訥で美しい映像が鮮烈でした。渋谷の「ロシア・アヴァンギャルド」展に出品されていたのはピロスマニが20世初頭にこの時代の気鋭な画家たちに見出された画家であったということです。ピロスマニ自身は旧ソ連グルジアの町で看板を描いては食事や酒代を稼いでいる放浪画家だったようですが、まさに時代がプリミテイヴ・アートを求め、それによって一躍脚光を浴びることになったわけです。人物はいずれも正面を向いて特徴をよく捉えた風貌、人物の他に動物を多く描いていた様子が伺えました。「へたうま」という造語がぴったりな異質で偉大な画家であったと思います。                   Yutaka Aihara.com

「AボーシャンとGモーゼス」展

先週の自分の個展開催時に、銀座を拠点に美術館を見て周り、1週間で6つの展覧会を見てきました。今日はその最終報告。新宿の東郷青児美術館でやっていた「アンドレ・ボーシャンとグランマ・モーゼス」展。正規の美術教育を受けていない独学の素朴派と言われる人たちの絵画です。画面いっぱいに楽しい雰囲気が溢れ、そこには描くことが大好きという基本的な姿勢がありました。世間の流行やら美術界の動向やらを気にしていると、こういう作品に出会うとハッとすることがあります。国立新美術館でやっていたオーストラリア・アボリジニの画家「ウングワレー」も、渋谷でやっていたロシア・アバンギャルドのグルジアの画家「ピロスマニ」も同じです。表現したいから表現するという本能に近い創作意欲。今年の夏はそうした素朴派の芸術家に学ぶところが多いような気がしています。自分の個展と対峙して自分を振り返る機会を作ろうと、これも本能に近いところで自分は感じているのかもしれません。                          Yutaka Aihara.com

民間企業派遣研修

今日から1週間、近隣にある造園土木株式会社に勤務です。といっても横浜市がやっている研修で、現在100人以上の同僚が様々な業種で研修をしています。自分の派遣先は造園土木の会社で、今日は丸一日外で仕事をしました。朝たった1時間程度の除草の仕事で、全身から汗が噴きだし、社名の入った服がびっしょりになりました。9時から17時までの労働。かつて学生時代に父を手伝い、こういう仕事はもう今後はしないものと決めていたのに、何の因果か父が亡くなった7月に父の残した造園業を別の形でやっているとは…。先週の個展に引き続き、今週の派遣といい、普段とは一味違う暑い夏が続きそうです。早く夏休みが来ないかなと心待ちにしています。  Yutaka Aihara.com

「カルロ・ザウリ」展

昨日までの銀座通いで見た展覧会は全部で6つあります。ブログには先週4つの展覧会の感想を寄せました。今日は竹橋の国立近代美術館で開催しているイタリア人陶芸家「カルロ・ザウリ」展の感想を書きます。自分の個展も陶彫によるものなので、「カルロ・ザウリ」に対する関心は高く、また表現技法も含めて興味津々で出かけました。ザウリは1960年代には壺の概念から陶彫へと仕事が展開し、灰白色の釉薬を使った「ザウリの白」と呼ばれる技法が定着しています。そのあたりから大振りで緩やかな稜線をもつ生命体のような作品が生まれています。土の物質性が際立つものですが、日本にもこうした作品は数々あり、ザウリの作品に新鮮な驚きはありませんでした。ただ、イタリアの風土がもつ伸びやかなフォルムは遺憾なく表現されて、日本の細やかな陶彫とは趣の異なった感じはもちました。ともかく大きな陶彫作品に接したのは久しぶりのことなので、自分の気持ちにも張りあいができました。                           Yutaka Aihara.com

個展最終日&搬出

今日は個展最終日。いろいろな人が見えて懐かしい話が耐えませんでした。年間1回の個展は親交をあたためるという機会にもなります。来ていただいた方々には猛暑にも関わらず心から感謝を申し上げたいと思います。自分は来年に向けての方針も決まってきました。搬出は思っても見ない人たちが来てくれて、テキパキと捗りました。手伝い2名に加えて、普段から付き合いのある業者4名、それに家内と自分の計8名で、作品を解体して箱詰めを行いました。本当にお世話になりました。とくに業者さんに手伝いを含めて自宅まで自分たちも運送トラック等で送っていただきました。こうした人たちの協力があって成り立つ個展だと毎年のことながら感じています。ここで区切りをつけて、また制作生活に戻ることにします。やり足りないことがいっぱいあります。個展をやる度に自分の作品の甘さ、不甲斐なさを反省しています。だからこそ来年も頑張れると思います。来年7月を目指して明日から新作をスタートさせる所存です。                   Yutaka Aihara.com

「対決・巨匠たちの日本美術」展

銀座の個展会場から上野の国立博物館まで足をのばし、「対決・巨匠たちの日本美術」展を見てきました。平日にも関わらず大変な混みようでした。比べようもありませんが、自分の個展会場には人がほとんどいないのに羨ましい限りです。「対決」というタイトルと巨匠作品を一対にして見せるという企画が優れていて、その結果として集客力が生まれるのだと感じました。自分も一対になった巨匠の名を見るとワクワクしてくるのです。会場は思った通り秀作ぞろいで、どれも力の籠もったものばかり。対決というより、何を見ても日本美術の精神性、奇想、技巧、そのすべてにわたって面白さに溢れていました。とくに今日は屏風表現の広がり、その立体的な展開に圧倒されました。今日はこの展覧会だけで銀座に戻ることにしました。美術館を2つかけもつことは出来そうにありませんでした。銀座の個展でも時々人が現れては様々な感想を言っていただきました。個展は明日が最終日。あっという間の1週間です。

「舟越桂 夏の邸宅」展

個展開催中に周る美術館の旅も慣れてきました。昨日も今日も2つずつ美術館を見ているのですが、ブログではひとつずつ紹介していきたいと思います。今日は目黒にある東京都庭園美術館で開催している「舟越桂 夏の邸宅」展。舟越桂は木彫彩色の西洋風なフアンタステイックな具象人物像で知られた彫刻家です。最近は自ら作った具象形態をコラージュして、不思議で寓意に満ちた世界を作っています。スフィンクスというシリーズは長い首をもった端正な顔立ちの両性具有の彫像が繰り返し現れて、謎めいた問いかけを鑑賞者にしているように感じます。その作品がアールデコ建築の中に置かれたらどうなるのだろうという興味があって出かけてみました。これは企画の勝利だと感じました。意図された通りの幻想的な室内空間に酔いました。さらに四谷シモンの人形ならこの空間はどうなったかなと余計なことも思いつつ贅沢な空間を満喫しました。                      Yutaka Aihara.com

「エミリー・ウングワレー」展

昨日に引き続いて、個展開催のために東京通いを理由にして、美術館めぐりをしています。今日は六本木にある国立新美術館で開催中のアボリジニの画家「エミリー・ウングワレー展」へ行ってきました。80歳近くなってから画布をオーストラリアの大地に広げて、空き缶に入れた絵の具で奔放に描いた大作は、現代社会の歪んだ生活を一掃するほどの開放感を与えてくれました。伝統的なボデイ・ペインテイングから始まり、彼女の持つ天性の色感は留まるところを知らず、時に点描であったり、線が絡んでいたり、まさに現代アートそのものでした。アートとは無関係な環境から現れたアート。生きるがまま描いた何の衒いも無い画面。外の猛暑を忘れさせてくれる清々しさ。自分も身体が動く限りモノ作りを続けたいと思いました。

「ロシア・アヴァンギャルド」展

個展開催中は毎日銀座へ出かけるので、これ幸いに東京で観たい展覧会を総ざらいしようと決めました。今日は渋谷のBUNKAMURAザ・ミュージアムで開催している「青春のロシア・アヴァンギャルド」展へ行ってきました。自分の趣向に合う展覧会で、立体派やプリミテイヴ、構成主義など今なお新鮮に見える作品が並んでいました。色調が時代を反映して、深い赤や緑の補色同士がぶつかる画面から強い印象を与えられました。一言で「ロシア・アヴァンギャルド」と言っても多様な表現があり、当時のヨーロッパの芸術運動と密接な関わりがあることもわかりました。シャガールやカンデインスキー、マレーヴィチ等近代美術を代表する画家の作品も見られて、しばし幸福なひと時を過ごすことができました。ピロスマニの作品がまとまって見られたのは驚きでした。これはまた後日ブログにしたいと思います。          Yutaka Aihara.com

個展オープニングの一日

本来なら祝日は休廊するところを画商の田中さんにお願いして、今日から個展を開催していただくことにしました。今日はオープンする11時からオープニングパーテイーが終了する19時まで画廊につめていました。友人知人が時々見え、また近況の話ができて、結構いい時間が持てました。オープニングパーテイーは17時から始まり、作家仲間や美術館のオーナー、初めて知りあえた建築家の方、教え子たちが集い、例年になく落ち着いた雰囲気で過ごすことができました。今回展示した「発掘〜遺構〜」はテーブル上の陶彫部分とテーブルを支える柱の表現が異なり、かなりまとまりを欠くものになりましたが、上と下で別の作品が混在する様子は、それでも迫力が感じられるという感想をいただきました。テーブルの上に展開する架空都市は道があった方がよいとも言われました。なるほど道が貫通していれば、全体のまとまりがもう少しあったのかもしれません。都市には道があり、それによって区画整理が出来るものだからです。一方、建築家は実用性のない都市をかなり楽しんでいられた様子が伺えました。この搬入からオープニングに至る数日間は心身ともに疲れ果ててしまいました。また明日も画廊に通います。

搬入記念日

昨日に続いて猛暑日。運送のトラックに作品を積み込んだのが午前11時。業者2名、手伝い2名、家内と自分の計6人で銀座のギャラリーせいほうに向いました。ギャラリー到着がちょうど正午を少々過ぎた頃。画商の田中さんはすでに来られていて個展の看板が設置してありました。梱包を解いて、さっそく作品の設置を始め、何とかカタチになったのが午後2時過ぎ。汗びっしょりになって最終確認を終えました。7月の個展は初めてなので毎年こんな暑さの中で搬入作業をするのかと覚悟を決めました。少なくても昨年までやっていた4月初めよりは余裕が持てるので、この季節が毎年個展の時期となるのかなと思いつつ…。作品の自己評価は明日あらためて書こうと思います。                               Yutaka Aihara.com

作品の運搬作業

明日はギャラリーせいほうに作品を搬入します。そこで今日は作業場に置いてある杉の柱やテーブル彫刻のテーブル部分になる厚板やその他諸々の部品類を運び出しました。いつものようにトラックをレンタルして、家内と2人で汗を流しました。今日は学生のボランテイアはありません。関東地方が梅雨明けして、さっそく猛暑になり、そのせいか運び出すだけなのに身体はクタクタになってしまいました。午後に陶彫作品が待つ置き場に柱や厚板が到着して、これで「発掘〜遺構〜」はすべて揃ったことになります。汗でびっしょりになったTシャツを何枚も替えて、身体が消耗していく作業はつらいものですが、明日のことを考えるとワクワクしてきます。あとは運送業者を待つだけです。やっと個展へ向けて気分が高揚してきました。       Yutaka Aihara.com