「木彫」について

「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入り、今回は「5 木彫」をまとめます。ゴーギャンの立体作品と言えば、レリーフ状の木彫が有名で、そのテーマは南洋での楽園を扱ったものが、私の印象にあります。今回の「5 木彫」はその前段階というべき時代に着目していて、フランスのブルターニュに残る木彫を主題にしていました。彼の地でともに過ごしたエルネスト・ド・シャマイヤールとの関係で、ゴーギャンが木彫を始めた契機が描かれていました。まず、アンドレ・サルモンの文章から拾います。「夏にやって来て『そのまま留まった』芸術家〔ゴーギャン〕に、ブルターニュの昔の『彫り師たち』の芸術を伝えたのはこのかつての代訴人〔シャマイヤール〕である。~略~こうして伝統的なメチエを取得したゴーギャンが、彼に手ほどきをしてくれた者〔シャマイヤール〕に対し逆に教えを施したことは当然であった。なぜなら彼は本質的に師匠であり、一言でいえば、天才芸術家だったからである。」シャマイヤール自身も「小箪笥」や「食器棚」に自ら木彫をやっていて、またゴーギャンに弟子ベルナールとの共同制作「地上の楽園」の依頼もしています。「地上の楽園」のモティーフにはマルティニーク島の自然や風俗を持ち込んでおり、図版によるとゴーギャンらしさの現れたレリーフになっています。「《地上の楽園》にもマルティニークのモティーフが登場していたように、この作品の他にもタイトルやモティーフの中に前年滞在したマルティニークを喚起することによって、重層的なイメージを作り出していることに注目したい。ここでは、裸婦が左手に持った果物と左右のグロテスクな顔が生み出す誘惑のテーマが、タイトルとともに先に引用したところのゴーギャンがマルティニークから妻に送った手紙の一節を想起させる。すなわちそこには、土人の娘が胸の上で押し潰して呪文をかけた果物を食べたら彼女のいいなりにならなければならないという、『土地の習慣』が語られているのである。」

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