「作陶への取り組みの第一歩」について

「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第2章 最初の陶器(1886秋~1887初頭)」に今日から入ります。今回は「1 作陶への取り組みの第一歩」をまとめます。1889年の万国博覧会についてゴーギャンの見解を掲載した雑誌記事を紹介します。「陶芸はつまらないものではない。時代をもっと遡ってみると、〔南〕アメリカ大陸の土着の人々の間では、この芸術がつねに珍重されてきたのだ。神は少しの土で人間を作り給うた。少しの土があれば金属や宝石が作れるのだ、少しの土、そして少しの才能があれば!まさにこれこそ興味深い素材ではなかろうか?」ゴーギャンは陶芸家エルネスト・シャプレとの出会いから陶芸を始めますが、シャプレとの協力関係で作られた陶器は僅か5点を数えるだけで、ゴーギャンの進んだ方向は、さらに芸術性の強い「彫刻するべき陶器」または「陶製彫刻」と呼べるものでした。これは私が追求する陶彫そのもので、私は京都の走泥社あたりが自分の技法の発祥かなぁと思っていましたが、ゴーギャンが陶彫の生誕に関わる最初の芸術家だったことを認識しました。こんな文章があります。「ゴーギャンは素朴で鄙びた味わいをもつ民衆的な素材である炻器の粗い表面と硬く焼き締まったプリミティフな感覚を好み、これを生かすために機械的手段である轆轤は用いず、時には紐状の陶土を巻き上げる『紐作り』の技法によって、時には板状の陶土を貼り合わせる『板づくり』の技法によって立体を成形した。」これはまさに現在私がやっている「発掘シリーズ」の陶彫の制作方法です。私にはもはや陶土を用いても陶器という概念はなく、彫刻を土のまま焼成して保存させるためにやっているのです。ゴーギャンの時代では、陶彫はあくまでも陶芸の範疇にあって、陶芸に革新を齎すものと考えていたのでしょう。「彫刻的アプローチによって陶芸に新しいフォルムをもたらすという大胆な芸術意図のもと、彼はこの昔ながらの素材にふさわしいプリミティヴで力強い生命力を備え、同時に新奇で近代的な陶芸作品を生み出そうとしたのである。」

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