「背景ー装飾芸術の復興」について

「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の第一部「19世紀における『画家=彫刻家』と『芸術家=職人』の登場」の第2章「芸術家と職人」について「1背景」のまとめを行います。副題に「装飾芸術の復興」とあり、19世紀の特徴として、工芸と呼ばれる装飾芸術の地位向上がありました。「1890年代のアール・ヌーヴォーへと続くこうした動きの中で、『職人』ではなく、産業化以前のように『芸術家=職人』による製品が目指され、それは小芸術と呼ばれた装飾芸術の価値を向上させるとともに、絵画、彫刻という大芸術と小芸術の間に確固として存在したヒエラルキーの揺らぎへと導いていったのである。」ゴーギャンもこうした時代背景の中で活動した芸術家であったので、装飾的彫刻である壺を制作しています。本書は『芸術家=職人』の誕生に貢献した人物としてフェリックス・ブラックモンを取り上げています。ブラックモンは版画家でありながら陶磁器の装飾を手がけた人でした。「アール・ヌーヴォーを支配していた『素材の論理』と『装飾(オルヌマン)の論理』の二重の論理の出発点にブラックモンは位置していたのである。そしてまさしく素材と装飾の原理はゴーギャンにも継承されていくのである。」アール・ヌーヴォーは私の大好きな芸術様式で、その優美な装飾が絵画や彫刻に応用され、19世紀後半を彩るものになったと理解しています。本書は次に装飾芸術の美術館開設への動きが書かれていました。「イギリスの美術館は、産業化に伴う芸術的質の低下の改善のために職人たちを教化することを旨としていた。セーヴルの陶磁器美術館は、これとは対照的に、設立の契機こそ産業化の波とは無関係であったが、19世紀の産業化社会の進展の中で高まりを見せていた民衆と生活と結びついた歴史的陶器への関心を反映して、高貴なものから民衆的なものまで、そして世界各国のあらゆるカテゴリーの遺品が集められ、19世紀中に世界有数の陶磁器コレクションが形成されたのである。」現在はさらに工芸と絵画や彫刻のボーダーがなくなっており、アートの中にはどちらとも言えない作品が数多く存在しています。私の陶彫作品も彫刻的な思考ではあるけれど、陶を素材とするもので、工芸的な技法で作られています。そうした現代に繋がる要素が培われた出発点がここにあったと思われます。

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