横浜の「トライアローグ」展

先日、横浜美術館で開催されている「トライアローグ」展に行ってきました。トライアローグとは三者会談の意味で、横浜美術館、愛知県美術館、富山県美術館の3館の20世紀西洋コレクションを一堂に会して展示する企画展を指しています。「この展覧会は、各館の所蔵作品を組み合わせて20世紀の西洋美術の流れを俯瞰すると同時に、各館の収集活動について振り返り、公立美術館で20世紀西洋美術のコレクションをもつ意味や、鑑賞のあり方、今後のコレクション形成について、改めて考察する機会とすることを目指している。~略~移動の制限等により、今後海外から作品を借用しての大型展が難しくなるといわれているなかで、国内にある西洋美術作品の展覧会における活用は、これまで以上に重要となるだろう。」コロナ渦の中で美術館が果たす役割等も視野に入れた試みだったことが図録から読み取れました。3館の展示作品をさらに3つの時代に分けて、作家別に展示する企画もあって、私は楽しめました。まず1900年以降について。「芸術の都パリの内外からそのシーンの動向を注視していた作家たちは、キュビズムの実験から対象の視覚的再現への懐疑を受け取りつつ、次第にそれを網膜上の経験とは別の、たとえば人間の精神や内面、音楽や色彩、形や素材そのものの表現へと作り変えていった。」(副田一穂著)これは所謂抽象絵画への発展を指しています。次に1930年以降について。「ブルトンが詩人であったことに象徴されるように、シュルレアリスムは文学の領域で胎動した運動である。しかし、夢や無意識を介して理性や固定観念の束縛から現実を解き放とうとするその理念は、もとより視覚芸術との親和性が高く、瞬く間に様々な美術分野を巻き込んで展開した。」(松永真太郎著)そして1960年以降について。「1960年代には、おおまかに分けて相反する2つの傾向が現れる。そのひとつが、大量生産・大量消費社会、マスメディアの隆盛といった時代状況を色濃く反映したネオ・ダダやポップ・アート。もうひとつが、作品の表現要素を最小限まで削ぎ落したミニマル・アートである。」(碓井麻央著)3館の学芸員がそれぞれの時代を分担して図録を執筆している上、綿密に話し合ったであろうことがよく分かる展示と解説になっていました。本展は西洋美術作品に絞っているため、切り口として私たちが中学校や高等学校で習ってきた作品が中心になり、それだけに安心して見ていられるのですが、大きな捉えで言えば美術史はさらに西洋に限らない展開もあるはずです。それらのトライアローグも今後あってもいいのではないかと思った次第です。

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