週末 美大の卒業制作展へ

今日も昨日に続いて展覧会に行きました。今日は工房に出入りしている美大受験生と一緒に東京都八王子市にある多摩美術大学の卒業制作展に車で出かけました。首都圏にある美術系大学の卒業制作展は3月に集中していますが、多摩美術大学は専攻を分けて1月と3月に行っているのです。私は同大彫刻科の助手と知り合いで、彼らが構内を案内してくれました。コロナ渦がなければ、私は毎年秋に開催している美大の大学祭(芸術祭)にも出かけて、若い世代の人たちの作品を堪能していました。通常の展覧会と違い、美大生の展示発表は課題もあれば可能性もあって、その双方を感じることが出来るのです。私自身の彫刻家としてのスタートと重ね合わせ、自分が必ずしも満足のいくスタートではなかったことを再確認し、自分が紆余曲折しながら進んできた道を振り返る機会にもしています。拙い表現は百も承知で、多くの学生作品を鑑賞し、私はこれからの彼らの可能性を信じようとしています。勿論現在の学生を取り巻く情報が、私の時代とは比べものにならないことは分かっています。彫刻科の発表も私たちの時代のように人体塑造ばかりが並ぶ状況ではなくなっています。私も入学した当初は、実材を扱いながら優れた表現に辿り着きたいと願っていましたが、結局4年間を通して人体一つもまともに作れない恥ずべき結果になってしまいました。表現媒体がどうであっても、何かを表現したい意思は見取ることができます。その強弱がよく現れるのが卒業制作なのです。私は当時の自分が恥ずべき結果であっても諦める事はせず、ブレることがない道を歩んできた自負はあります。そうなる学生が何人いるでしょうか。その中には優れた表現力を獲得しつつある学生もいました。彼らには当時の自分が足元にも及ばない表現力がありました。将来有望な学生が環境が整わず、その才能を曇らせてしまうことが残念でなりません。と思えば、4年間何をしてきたのか分からない学生もいました。美大の卒業制作展が面白いのは、美大生全員が己の内面に向けた闘いを強いて、その結果を可視化できるのが同展だからです。一緒に連れて行った美大受験生には良い刺激になったはずです。私も初心忘れずに長く続く道を歩んでいきたいと思った次第です。

関連する投稿

  • 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
  • 東京の展覧会を巡った一日 今日は工房での作業は止めて、家内と東京にある美術館に出かけました。コロナ渦の影響で最近ではネットによる予約が一般的になっていて、入館時間も決められています。今日は2つの美術館、3つの展覧会を巡りまし […]
  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 週末 土練り&美術館散策 週末になりました。週末になると私は職場の仕事を一時忘れ、創作活動に邁進します。心が解放される瞬間がやってくるのです。今日は武蔵野美術大学美術館で開催されている「脇谷徹ー素描ということ」展に行こうと前 […]
  • 彫刻家として… 4月になりました。昨日は管理職退職辞令交付式に参加して、私の公務員人生にピリオドを打ちました。今まで職種を隠してきましたが、同じ職種の方々がこのNOTE(ブログ)をご覧になっていることもあり、今にな […]

Comments are closed.