「建築とは何か 藤森照信の言葉」読後感

「建築とは何か 藤森照信の言葉」(藤森照信他著者多数 エクスナレッジ)を読み終えました。建築史家であり、自らもユニークな建築を作っている造形家でもある著者は、私がずっと注目してきた人であり、その言葉を刻みつけたい著述家でもあります。最後に藤本壮介氏、布野修司氏2人の建築関係者からの質問があり、そのうち藤本氏の五原則の問いかけが私にとって面白かったので引用いたします。その五原則とは、柱・土・洞・火・屋根の5つになります。まず柱。「日本の独立柱は、構造材という実用性を超えた特別な意味が付与される場合がある。例えば、家全体の中心位置の柱を大黒柱と呼んで神聖視したり、一番格式の高い部屋の正面の飾り柱を床柱と名づけ、一番高価な柱材を立てる。」次に土。「土盛りや土塊には、柱のような人間の意志や力は感じられず、いつしか盛り上り、自づと土の粒が集って塊を成し、いづれ大地に還るような印象がある。」次に洞。「大地に穴を掘って住めばいい。洞窟である。洞窟は、土盛りや土塊と同じように、目地がなく、床、壁、天井がぐるりとつながる。土盛りや土塊の反像といえばいいか。~略~こうした洞窟状態について、自分の中に閉じこもった、と説明される。自閉とも引きこもりとも言う。デカルトこそがモダニズムの哲学的基盤を築いたと30年前の原広司は語った。同じデカルトは、洞窟状態をいたく批判している。ということは、モダニズムの対極は洞窟、ということになる。」次に火。「茶道には千家の『茶の湯』ともう一つ別に『煎茶』の流れがあって、作法も茶室も相当ちがうことは知っていたが、炉の有無が重要なポイントとは思いもよらなかった。~略~でも、茶室から炉と火を抜いたらどうだろう。エネルギー源が消え、ただ狭いだけの空間になってしまうのではないか。極限的に狭くしながらしかしその中心には火がある、この緊張が、この凝縮が茶室の本当の魅力なのだ。破壊寸前の空間。」最後に屋根。「世界大戦は屋根と外壁とのあいだで闘われた。屋根面を見せない外壁勢力は、文明史の相当早い段階、例えば新石器時代には地中海東側の”肥沃な三日月地帯”を支配していたらしい。そして支配はメソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマとつづく。~略~20世紀初頭の闘いで屋根は箱に負けた。たしかに屋根は負けたのだが、でも最後に負けたということは、白い箱に最後まで抵抗するだけの強い表現力を持っていたのが屋根だった証となる。」読後感としてのまとめにはなりませんが、一応著作としてはここまでにして、次に藤森照信建築写真集が手元にあり、それを眺めながら、もう少し藤森ワールドに拘っていきたいと思っています。

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