イサム・ノグチ 様式の変遷とプリシラ

「石を聴く」(ヘイデン・ヘレーラ著 北代美和子訳 みすず書房)は「イサム・ノグチの芸術と生涯」を扱った評伝で、今回は第36章「変化したヴィジョン」と第37章「プリシラ」のまとめを行います。1958年に米国に戻ったノグチは新たな表現方法を模索しました。「アルミニウムを折り、穴を開けることでノグチは奥行き感と量感を創出した。この方法は、1940年代のスラブ彫刻、そして折り紙と多くの共通点をもつ。それはまるで、禅寺の庭で半ば地面に埋められ、重力に縛りつけられた岩とは正反対の様式の探求を、ノグチが選んだかのようだった。」また一方で大理石を彫る仕事にも取組み、「変化したヴィジョンに、ぼくはいかにすばやく適応することか。これは触覚的価値の完全に感情的な領域だった。」と自ら語っています。「アルミ彫刻で軽さを探求したことをきっかけとして、ノグチはバルサ材でも仕事をした。~略~バルサ材彫刻最大の《犠牲者》は戦争で破壊された人間の姿をあらわす。ノグチはこの作品について『悲劇は重さの緊張、絡み合う四肢によって暗示される』と書いた。」この時期ノグチは重要なパートナーと出会っていました。「歳月が経つにつれてノグチとプリシラは深い友情を育んでいった。忠誠と相互理解という意味では一種の結婚ともいえる協力関係だった。もっともどちらも実際の結婚は望まなかった。~略~大きな活力、臨機応変の才、組織能力で、プリシラはノグチにとって計り知れない助けとなった。」プリシラの支援を得て、ノグチには大きな仕事が舞い込んできます。「『テキサス彫刻』という名で知られるようになるこのプロジェクトには、ノグチが大きな手間をかけて運び出した灰緑色の花崗岩から彫られた大型の作品二点が含まれる。ノグチはこの二対を一種の門、そして『エネルギー(金はエネルギーだ)の象徴』とみなした。抽象ではあるが、人体を連想させる。二体はプリミティヴなトーテムのように銀行の煉瓦敷きの前庭を見張る。」さらにノグチの活躍は続いていきます。

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