横浜の「スーパークローン文化財展」

横浜駅に隣接するそごう美術館で「スーパークローン文化財展」が開催されています。これは東京藝術大学で開発された高精度な文化財再現技術で、スーパークローン文化財と呼んでいるのは、最先端のデジタル技術に、人の手わざや感性を取り入れた伝統的な模写技術を駆使しているからです。スーパークローンとしてオリジナルを超越し、新しい価値をそこに創ることは、単なる模写と違い、文化を継承する手段としては最高のものを提供してくれるだろうと察しています。展覧会に並べられた文化財再現作品は、成程素晴らしいものばかりで、丹念な調査を基に緻密に模写された造形に感動を覚えました。テロリストによって破壊されたバーミヤン東大仏の壁画の復元など、シルクロード文化財の再現作品の数々の展示がありました。さらに私が関心を持ったのは、法隆寺釈迦三尊像の再現でした。法隆寺の中で見るお馴染みのアルカイックスマイルの仏像でしたが、再現された像がそごう美術館にありました。ビデオにその鋳造の場面が映し出されていて、職人による工程を見ていると暫し時間を忘れてしまいました。法隆寺金堂壁画の消損前の縮小再現作品では、その神々しい図柄に我を忘れました。囲いのあった高句麗の「四神図」の展示で、家内はゾクっとしたと言っていましたが、一人ずつ入る小部屋の内部は「朱雀」「玄武」「白虎」「青龍」が四方それぞれの石壁に描かれている状況を、まさにクローンとして再現されていて、私も不思議な感覚を持ちました。昨年訪れた大塚国際美術館のタイル画による名作再現にも驚かされましたが、今後はこうしたスーパークローン文化財の需要はますます高まっていくと考えられます。人類が残した貴重な文化財が、時空を超えて私たちの眼の前に現れる体験は、幸福な瞬間と言えるでしょう。

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