7月RECORDは「朱」

今年のRECORDは色彩をテーマにしています。一日1点ずつポストカード大の平面作品をRECORD(記録)と称して作っていますが、一日で作品が完成せず、下書きだけで終わってしまう日が多くあります。下書きには色彩がありませんので、下書きばかり先行している現状は危機的状況です。それでも今月のRECORDが既に始まっていて、今月は「朱」に決めています。4月のRECORDで「紅」を取り上げましたが、赤系列の色彩としては2度目です。今回も日本の色彩用語の中から色彩を選んでいます。西洋の色相環とは異なり、日本には情緒のある微妙な色彩があって楽しいなぁと思っています。若い頃の自分は色彩表現が苦手で、デザイン分野に進学することを諦めました。色彩が楽しいと感じたのは、20代後半に滞欧生活があったからと言えます。ヨーロッパの人たちの色彩に対する感覚は、なかなか優れていて、色彩の取り合わせが大胆かつ繊細だなぁと思いました。ヨーロッパは1年間を通じて鬱陶しい曇り空の日が多く、建物もグレートーンでしたが、その中で目に染みるような鮮やかな色彩があると、単調な風景の中でハッと驚くような刺激をもらいました。たとえばそれはファッションであったり、グラフックデザインであったりしましたが、それは原色ではなく何か少量が混色している色彩で、その取り合わせによって色彩が輝くような効果を齎しているのです。日本の味わいある色彩に触れたのもヨーロッパでの経験で、海外の人の眼を通して日本には素晴らしい色彩文化があると再認識をしました。「朱」はそうした色彩のひとつです。他の色彩と組み合わせることによって朱色が強調されるようなRECORDを目指します。

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