イサム・ノグチ 中国と日本への旅

「石を聴く」(ヘイデン・ヘレーラ著 北代美和子訳 みすず書房)は「イサム・ノグチの芸術と生涯」を扱った評伝で、今回は第12章「自然に理由を見つけるために」と第13章「大地との固い抱擁」のまとめを行います。本書は2ヶ月読書を控えていて、久しぶりに戻ってきたのでした。というのはイサム・ノグチの母の伝記「レオニー・ギルモア」(エドワード・マークス著 羽田美也子 田村七重 中地幸訳 彩流社)を先に読んでいたためです。芸術家が誕生する契機とはどんなものか、母の生涯を通して私はその背景を探りたかったのでした。そこを踏まえてノグチの東洋への旅をまとめてみたいと思います。第12章の舞台は中国です。奨学金を得て、ノグチはまず中国の北京に滞在しています。「北京で過ごした日々、ノグチはできるかぎりすべての中国美術をむさぼるように吸収した。15世紀の寺院『天壇』に魅了された。ノグチによれば、そのフォルムは宇宙と地球の関係観念を表現した宇宙論を意味する。広大な寺院群のなかでノグチにもっとも強い印象をあたえたのは、円と正方形を組み合わせた段状の木造建築だった。」後年、ノグチの制作した公共的な彫刻作品に、円と正方形が象徴的な意味をもって登場してくるのは、この時期の影響かもしれません。次の第13章では日本への旅が綴られています。父野口米次郎との確執で微妙な関係だったにも関わらず、ノグチは京都を訪れています。「ノグチは京都で暮らした4、5ヶ月を『大いなる内省と沈黙の時期』と呼ぶ。『なにか原始の素材でアイデンティティを求めながら』『大地との固い抱擁』を楽しんだ時期だった。」この時期は陶芸に親しんでいたようです。「子ども時代に母から手ほどきをうけた仏教庭園の再発見は、彫刻のとりくみについて新たな考え方を促した。ひとつの彫刻が自己規定されたオブジェである必要はなかった。それは空間や庭園でもあるうるし、大地もまたアートの素材たりえた。」ここには重要な空間解釈があって、共感と共に私の心を打ちます。「日本に対するノグチの感情は曖昧なままにとどまった。わが目で見た外国人排斥と軍国主義はノグチにとって嫌悪の的ではあったが、それでも日本文化に対する情熱は消えなかった。」

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